子どもから大人までついスマホばかり見てしまう昨今ですが、この絵本ならスマホに勝てるかもしれません。
大ヒットしてアニメ化、グッズ化もされている「おしりたんてい」シリーズ。売れている理由の一つは、主人公のおしりたんていが、お尻に酷似した顔だということでしょうか。フロイトのいう「肛門期」説を持ち出すまでもなく、子ども(とくに男子)や子ども心を持ち続ける大人は、お尻に強く反応します。助手のブラウンはかわいい子犬でこちらは女子の心をつかみそうです。
おしりにちなんだ口癖「フーム、においますね」や、おならを発する時の決め台詞「しつれいこかせていただきます」もキャッチーで印象的。「こかせていただく」と丁寧語に現れているように、おしりたんていはファッションや物腰が上品で紳士的。お尻やおならが出てきても下品さを感じません。絵柄がかわいくてていねいに描かれているから、というのもあります。
絵本の中には少ない労力で儲けたいんじゃ……と思わせられる絵柄のものもあったりしますが、「おしりたんてい」に関しては、背景や登場人物の欄外のつぶやきなどとにかく細かくて、手間がかかっています。ページを開くと空白がほとんどない情報密度。スマホに勝てる、と書いたのはこの点が大きいです。
間違い探しや迷路、推理などが出てくるのも、ゲームの世界に入り込んだようで楽しめます。お子さんがいる親にとっては子供の知力がアップしそうなメリットを感じそうです。ちなみに大人でもそこそこ難しくて、絵の中の「おしり」を5個探す、というページでは結局4個しか見つかりませんでした……。ふと、もしかしてと思ってカバーの裏を見たらそこにも間違い探しなどの問題が。この妥協のなさ。読者を楽しませようという良心を感じました。大人にとっても、仕事の手を抜いてないか、利に走ってないか、自省を促す知育教育本です。
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ポプラ社・1058円=5刷43万部。8月刊行。2012年から刊行するシリーズの最新作。計13冊で累計300万部を超える。=朝日新聞2018年9月22日掲載
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