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結果をうのみにしない「常識」の力 ゲアリー・スミス「データは騙る 改竄・捏造・不正を見抜く統計学」

 「ゴミを入れれば真理(ゴスペル)が出てくる」。入力するデータの質を考えずに、コンピューターが導き出す結果をうのみにする傾向を、アメリカの経済学者の著者はそう表現する。
 もとになるデータは「適切」か「ゴミ」か、分析結果は「まとも」か、まともに見えるが「でたらめ」か。見抜き方を数多くの事例をあげて示す。
 人類の祖先は森羅万象の中にパターンを見つけては意味を考え、生き延びてきた。そのため、人間は「パターンとそれを説明する理屈の魅力に簡単に屈してしまう」。
 例えば、「送電線の近くに住んでいる子どもはガンになる」。がんの発病はランダムであっても、地図上にがん患者の家を入力すれば、「かたまり」ができる。その近くにたまたま送電線があったことからでっちあげられた理論で、でたらめ。「射撃の下手な男が納屋の壁に向かって大量に撃って、銃弾のあとがかたまっているところに的を描いた」のと同じだと。「テキサスの狙撃兵の誤謬(ごびゅう)」と呼ぶ。
 注目すべきは、でたらめを見抜く方法として、「常識」が強調されていることだ。常識も人々に埋め込まれた共通の暗黙知。政府の統計不正が問題になっている今だからこそ、常識の力が問われる。=朝日新聞2019年3月9日掲載