アマゾンの社内会議では空席が一つ設けられる。会議が顧客に利益をもたらす内容になっているか、自問する環境をつくるための「エア・カスタマー」の席だ。「顧客中心主義」を徹底するアマゾンでは、顧客に向けて発信するメッセージもきちんと「伝わる」よう、「ストーリーで伝える」ことが求められる。その役割を担う同社日本法人の広報責任者を13年間務めた著者がアマゾン流の伝え方を指南。
対象を明確にし、到達したい「理想的な光景=ゴール」を決め、どうすればそう行動してもらえるか、逆算してストーリーを考える。例えばファッション分野の認知度を高めるPR。足が日本人女性の平均サイズで、商品の靴の履き心地などをモニターする社員がいた。「満足度を上げるためにここまでやっている」ことが伝わるストーリーの目玉として、通称「シンデレラ」と呼ばれていたその社員を、社内見学ツアーで登場させた。
理念、人、商品・サービス、設備、環境・立地について、他とは違う特徴を洗い出し、つなげると「唯一無二のストーリー」になるという。それは差別化戦略と同義語でもある。戦略が明確な企業ほどストーリーも豊富になることにも気づかせてくれる一冊。=朝日新聞2019年8月17日掲載
編集部一押し!
- 売れてる本 岩尾俊兵「世界は経営でできている」 無限に創造できる人生の価値 稲泉連
-
- インタビュー 鈴木純さんの写真絵本「シロツメクサはともだち」 あなたにはどう見える?身近な植物、五感を使って目を向けてみて 加治佐志津
-
- 小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 【特別版】芥川賞・九段理江さん「芥川賞を獲るコツ、わかりました」 小説家になりたい人が、芥川賞作家になった人に聞いてみた。 清繭子
- 朝宮運河のホラーワールド渉猟 黒木あるじさん「春のたましい」インタビュー 祀られなくなった神は“ぐれる”かもしれない 朝宮運河
- コラム 三浦しをんさんエッセー集「しんがりで寝ています」 可笑しくも愛しい「日常」伝える 好書好日編集部
- インタビュー 「親ガチャの哲学」戸谷洋志さんインタビュー 生まれる環境は選べない。では、どう乗り越える? 篠原諄也
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社