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「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」書評 強い同調圧力…濃縮された日本

評者: 呉座勇一 / 朝⽇新聞掲載:2020年09月05日
沖縄から貧困がなくならない本当の理由 (光文社新書) 著者:樋口 耕太郎 出版社:光文社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784334044794
発売⽇: 2020/06/17
サイズ: 18cm/250p

沖縄から貧困がなくならない本当の理由 [著]樋口耕太郎

 「沖縄の基地関連収入は県民総所得の5%にすぎない」。米軍基地がなくなっても沖縄はやっていけるという根拠として、よく挙げられる数字である。しかし、この「基地関連収入」の中には沖縄振興一括交付金も、酒税軽減措置も、那覇空港の着陸料の減額も、沖縄自動車道の料金割引も、沖縄サミットをはじめとする数々のイベントの開催も含まれていない。
 基地受け入れの実質的なバーターである各種の経済援助を足した場合、25%前後に達するのではないかと著者は述べる。そして、それにもかかわらず、沖縄の県民所得は11年連続で全国最下位である。
 補助金で甘やかしているから沖縄経済は自立できないという批判がある。一方で、沖縄経済が「ザル経済」なのは、援助の多くが県外企業の売り上げとなっているからだと主張し、「本土企業による沖縄搾取」を非難する声もある。
 著者は多数のウチナーンチュ(沖縄で生まれ育った人)と話して本音を聞き出し、沖縄の貧困の根本的要因を、彼らの価値観、メンタリティーに求める。沖縄社会は人間関係を最優先し、強い同調圧力によって出る杭の存在を許さない。労働者は突出を恐れて昇進・昇給を望まず、消費者は商品やサービスの良しあしを比較せずに平凡な定番商品を買い続ける。従順な労働者・消費者に支えられた沖縄企業は変化というリスクを避ける。
 沖縄問題とは、濃縮された日本問題である。同調圧力、有形無形の参入障壁、現状維持志向といった特徴は、日本が海外から再三指摘されてきたことでもある。だが、かつて金融の最前線にいた著者は、成果主義的な競争経済の虚しさも知っている。
 著者が示す「人の関心に関心を注ぐ」という処方箋(しょうほうせん)には面食らったが、その評価は本書を読まれた一人ひとりに委ねたい。コロナ禍の今だからこそ、心に響くものがあるはずだ。
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 ひぐち・こうたろう 1965年生まれ。野村証券などを経て、事業再生が専業のトリニティ社長。沖縄大准教授。