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中野香織さん
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副題に、「Satisfashion for Men and Women」と付けた。サティスファッション、とは耳慣れない言葉だが、中野香織(なかのかおり)さんによるとこれはローリングストーンズの名曲「サティスファクション」のもじり。ファッションやモードが「決して現状に満足しない」、絶えざる変革の営みであることを含意したタイトルだ。
変革が積み重なれば、それは歴史となり、物語となる。
本書は背広から下着まで、また定番からトンガッた流行まで、「着るもの」そして「着ること」にまつわる物語について、幅広い知識を渉猟したコラム集である。シャツの裾(すそ)を出すのがいけない理由は?「ループタイ」のことを英語では何と言う? あるいは、「シック」という言葉の隠れた意味、くつろぎの服「カーディガン」の語源となったカーディガン伯爵の破天荒な人生の影……。
ひとつひとつの物語を支えるのは、上質なエッセーの語り口だ。ファッションにうとい読者にも、心地よく、読みやすい。
「もしそうだとしたら、それは私がひとつの専門を突き詰めるのが苦手で、アマチュアとして調べる気持ちを持ち続けていることの裏返しかも」
でも、中野さんは調べることではプロ。もともとイギリス文化史の研究者なのである。大学で教える傍ら、雑誌で映画評などを書いてきた。子育てが忙しくなって、大学の方は休んで筆一本に。そんな経歴が多分、ファッションを「内側」の言葉で語らぬ風通しのよい筆致を生み出している。
メンズファッションの話題が多いのは、男性読者の多い日本経済新聞での連載を中心にしているためでもあるが、「女だからこそメンズを冷静に観察できる」とも。
新聞と並行して、現在、「ダンディズム」についての論考も雑誌で連載中だ。