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笹公人さん
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まるまると太ったヤブ蚊飛んできてガダルカナルからきたと囁(ささや)く
「ブラッシーの噛(か)み付きを見て死んだの」と少女は前世を語りはじめる
異化、という言葉が気恥ずかしくなるほど力みのない手つきで、笹公人(ささきみひと)さんの短歌は、私たちをスッと、日常のほつれ目から吸い出していく。行く先は、奇妙なドラマが凝縮した、宝玉のような空間だ。
題材はキッチュだったりポップだったり。しかしその自在な空想の中に、しっとりとした叙情がたゆたう。まか不思議。
笹さん自身も、「わしズム」「SFマガジン」「小学六年生」などジャンルを超えた雑誌に連載するほか、FM「J—WAVE」で短歌コーナーを持つ神出鬼没ぶり。さらにテクノポップバンドを率い、携帯コンテンツのゲームの制作も手がける。
歌人らしからぬこの歌人の出発点は、17歳の時に読んだ寺山修司の短歌だった。
「その物語性と、土俗的な妖(あや)しいオーラを放つ作風にひかれて」、笹さんの中に創作の悪魔(デーモン)が息づき始める。「短歌朝日」などに投稿をして入選を重ね、やがて結社「未来短歌会」に参加。岡井隆に師事し、歌人としてデビュー。第一歌集『念力家族』から数えて、本書が三冊目の作品集だ。
「僕の作品は邪道と言われるかもしれません。でも、佐佐木幸綱氏がある本でこんなことをおっしゃっていました。短歌という形式に殺されないためには、常に異端であろうとしなくてはならない、と」
作品集の帯に推薦文を寄せた蜷川幸雄、久世光彦、和田誠、糸井重里をはじめ、そうそうたる人々も、笹さんの作品に注目している。次にはさあ何が飛び出すか。
しろがねのドアをいきなり開けたのは電流帯びたニコラ・テスラ氏
指切りの指のほどけるつかのまに約束蜂の針がきらめく