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土屋賢二さん
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「そもそも問いの立て方が間違っているために悩まなくてもよいことを悩む。これらの問題の多くは言葉の誤解に基づいています。言葉を厳密に分析し、対話を通して問題を解決していく哲学のやり方が、世の中にもっと浸透してほしい」
数多くの軽妙なエッセー集で知られる「笑いの哲学者」土屋賢二(つちやけんじ)さんが、勤務先のお茶の水女子大で取り組んだ11回の講義録をもとにした哲学書を出した。時間や存在といった本来難解なテーマを「読者にも自分の問題として体験してほしい」と、哲学と宗教の違いなど具体例を示しながら、明快な言葉で丁寧に語りかける。
哲学の初心者にもライブ(土屋さんはジャズピアノもこなす)のようにうれしい本書だが、難しいことを易しく伝えるには実は大変な腕力が必要。聞けば学生時代から笑えない哲学的格闘の過去があった。
「僕は疑問が生じるとその答えを追究せずにはいられないんです」と、東京大では就職など後先を考えず法学部進学をやめて哲学科に。理由は「存在の謎が深遠に思えた」から。答えをハイデガーに求め、以後「好きなことをする人生を追求」。本は原書で読んだ。「アリストテレスのギリシャ語テキストと日々格闘し、アリストテレスが哲学の問題を言葉の問題と考えていると気づくまで10年かかった」という。そして、40歳前から向き合ったヴィトゲンシュタインが大きな転機になり、とくに「言語ゲーム」という考え方に没頭したとも。
「哲学は考えるプロセスが一番大切です。相手(人や本)の言うことを理解したうえで自分が納得できるか徹底的に吟味する。それは苦しいけれど楽しい」と土屋さん。そこには「人間は結局、一人ですべて決定して生きていく」との思いがあるようだ。人気哲学者の真摯(しんし)な姿に、少しだけ触れた気がした。