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河添房江さん
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瑠璃壺(るりつぼ)、秘色(ひそく)青磁、沈香(じんこう)、黒貂(ふるき)の皮衣……。平安時代、中国などから輸入された「唐物」は、天皇や貴族たちの権勢の象徴だった。そして源氏物語の中でも——東京学芸大学教授の河添房江(かわぞえふさえ)さんは、光源氏ら人物の関係や盛衰が、モノによっても、雄弁に表されていることを明らかにした。
「唐物をもたらした東アジア交易圏に注目して、源氏物語の世界を、よりダイナミックにとらえ直そうと思いました」
桐壺巻に、異国の人相見が「光る君」と賛辞し「いみじき贈物」をしたというエピソードがある。遣唐使が停止した後も鎖国状態ではなく、海商ルートがあったことが頭に入ってくると、光源氏が古代東アジアの空間で息づいていたのを感じる。
どんな唐物が描かれ、登場人物がどのように扱っていたかを分析した結果、モノがもっている情報量が拡大していって、古典の時空が、思いもかけぬほど広がっていく心地よい驚きを味わえる。歴史学では急速に東アジア関係の研究の再構築がおこなわれていることに刺激を受けたという。かつては歴史文学を耽読(たんどく)した少女で、国文学を専攻するまでは歴史学者になろうと思っていたという河添さんの、幅広い関心から生まれた成果だ。
源氏物語絵巻をデジタル技術を使って復元模写した絵も読み解いている。鮮やかに現れてきた畳の縁取り、衣服の模様などから、人物の関係や状況が、より明確に読み取れる面白さがある。
全国の大学で古典と名のつく授業が減る状況に危機感を募らせる。那須大学(4月から宇都宮共和大学)学長の夫とも、大学教育について語り合う日々だ。「源氏研究のフロンティアを考えることで、古典学の危機の処方箋(せん)を探していきたいですね」