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西加奈子さん
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浴槽のフタを開けると、カニが真っ赤にゆだっていた。バッタも毛虫もクモも出て夜は、カエルの大合唱。ソテツの大木が鎮座する庭にはチャボも野良犬もくる。何もないのににぎやかな、海も山も近い田舎で暮らし始めた作家夫婦の物語である。
田畑を耕す隣人らとの交流を交えながら、執筆に励む夫に寄り添う童女のような妻の、サラサラ水のごとくに流れる日々。2人の相思は間違いない。だが……。
夫の背中の、飛べない鳥の入れ墨は何の印か? 妻はなぜ夫の書斎に入ることを自分に禁じているのか? やがて彼らの上に影を落とす、封印したはずの昔日の夫の恋と妻の動揺、そして復旧を描いた3作目の書き下ろし長編。
登場人物をめぐる描写と、病弱だった9歳当時の妻が心の支えにした、お月さまのしもべのゾウが願い事を叶(かな)えてくれるという絵本の挿話との二重構造が面白い。童話の機能か、全体に漂う不思議な幻想性が魅力的だ。
「9歳ってすごく微妙な年齢やなあって思うんです。親が考えるほど、もうこどもじゃない。頭悪くない。例えば両親の気まずい雰囲気を察知してわざとおどける。気づかないふりして調整役になろうとする。そういう9歳の目線を表現したかった」
「私は、身近にいる人を一番大切にしてる人を尊敬してます。すごい出来事がおこっても日常に戻ることができれば、あ、大丈夫だなって思う。この本でも夫のムコさんには、やっぱり一番身近な奥さんのツマさんを愛してほしかった。ムコさんはイモだけどステキ。彼らは大丈夫です」
愛らしい子ゾウの装画を手がけたのも西さん。絵を描きたし、作中作の童話を独立させ絵本として出版する予定という。「絵はちっちゃいころから好きでした。えへへ、うれしい」