 |
|
長谷川 博さん
|
「今シーズン、鳥島から巣立ったヒナは195羽。過去最高でした」
30年前、その数はわずか15羽だった。観察日誌を前に語る長谷川博(はせがわ・ひろし)さん(東邦大教授)の笑顔には、アホウドリ保護・研究の第一人者として大目標を達成した充実感が浮かぶ。
東京から南へ600キロの伊豆諸島・鳥島を繁殖地とするアホウドリは、羽毛を採るために乱獲され、戦後まもなく「絶滅宣言」が出るほど数を減らした。その後、鳥島に置かれた測候所の人々らが保護に乗り出したが、65年に撤収。無人島となった鳥島での保護活動は途絶えていた。
長谷川さんが初めて漁業調査船で鳥島を訪れたのは76年。ゆうゆうと洋上を飛ぶアホウドリの姿に「一目ぼれ」した。以来30年にわたる観察と保護の歩みをまとめたのが本書。長谷川さんにはこれまで何冊ものアホウドリについての著作があるが、その「最新報告」にあたる。
保護が軌道に乗りかけた頃に営巣地を襲った土石流。新たな営巣地づくり。そこに彼らを定着させるために試みられた「デコイ作戦」(アホウドリそっくりの模型を置いて彼らを呼び寄せる手法)。淡々とした筆致の中に、幾多のドラマが描かれる。文章は小学生にも読めるよう、難しい漢字はふりがな付きだ。
長谷川さんは今も晩秋の産卵期、春の巣立ち期、保全工事をする初夏の年3回、鳥島を訪れる。時に1カ月半にわたるひとりぼっちの滞在生活での食べ物や暮らしぶりなど、フィールド研究者の「ナマ」の姿が描かれているのも本書の持ち味。
「野生生物保護はすぐには結果が出ない。でも厳しさを補ってあまりある喜びがあります」
若い元気のある人に加わってほしい、と長谷川さんは後に続く人々に期待をかけている。