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金井美恵子さん(59)
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■鈍な自己愛に生きる幸福
巡る因果みたいに、接点なしと見えた登場人物がつながっていく。金と時間をもて余す手紙魔の中年女。自らの精神的ゆとり(自称)を読者限定の私製通信で誇示する教養人きどりの建築家。こういうタイプとは価値観が全然違う女性作家やその姪(めい)……。彼らの日々がなぜか交わる不条理をあぶりだす連作小説集だ。
食に関するご託宣とか、ナルシストのふるまいに鼻白みながらもそれなりに対処する側の機知や寸評がおかしい。いるいる、こういう人、と思わず笑う。でもやがてドキッとするのだ。私って、何だかこっちの“鈍な自己愛”集団の方に近いかも。
「快適な生活は、まずお金があって、つまり消費することである程度は得られるでしょ。鈍な自己愛の持ち主であれば、その快適はさらに高まる。ものを考えなくてすむのだから気持ちよくやれるわけですよね。鈍な自己愛の持ち主の方が、どんな時代でも生きやすいのよ」
「この小説は、ヤナやつらの話です。でも小説ってヤナ人間を滑稽(こっけい)に書くために発明されたメディアなんじゃないかしら」。現代消費社会への皮肉? 「皮肉どころか、嫌悪してる。でも小難しいレッテルを張られるのは好みじゃない。考え込まなくていいのよ。問題は面白いかどうか。たかが小説なんですから」
19歳から小説を書き続けてきた金井美恵子(かないみえこ)さんである。「一作一作違うようでいて、実はどれもが同じ長い小説の一部なんじゃないか」という。「死ぬときに初めて完結するっていうか。テーマ? 同語反復のようだけど、テーマは小説だと思います」
そうやって工夫を凝らし時間をかけ苦労して書くことに心血を注ぐ作家が、“たかが”だなんて! 深い思いがあっての言い回しに違いない、と再び考え込んでしまうのだった。