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著者に会いたい

夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦さん

[掲載]2007年01月28日
[文・写真]加藤修

■妄想力と照れ隠しで疾走

 「黒髪の乙女」に片思いする純情な先輩の姿を描く恋愛小説――。そんなありふれた物語の骨格を持ちながら、舞台になった京都の町や大学を怪しくゆがんだ空間に変換させるずば抜けた妄想力をエンジンに、物語が疾走する。

写真森見登美彦さん

 森見登美彦(もりみとみひこ)さんの作品には、留年中に仕上げたデビュー作の『太陽の塔』以来、もてない、情けない学生が登場し「へたれ京大生小説」とも呼ばれる。

 「そう呼ばれるのは……しかたあるまいという感じです。たしかに、ぱっとしない学生ではありました」

 家賃2万円弱の4畳半の風呂なしアパートから、農学部と大学院に通った。そんな地味な学生生活の体験が、「地平線上にクリスマスという祭典がちらつきだし、胸かき乱された男たちが意図明白意味不明な言動に走りだす暗黒の季節の到来を告げるのは、学園祭の開催である」というような表現につながっていく。

 「文体は照れ隠しのようなもので、自分の考えをはっきり言うようなことはできるだけしたくない。過剰に文章の圧力を上げたり、擬音語や古くさい表現をわざと重ねて使ったりすることで、力を抜きたい。『乙女』なんてことばを使うのも、そのことばの持つ響きに物語を引っ張っていってもらいたいからです」

 古くさいようで新しい、奇妙にねじれた文体のファンも多いが、昨年秋に出した『きつねのはなし』では、静かに抑制された文体を選んだ。「書き方の原理は一緒です。派手に音を立ててごまかすか、ほとんど語らないことでごまかすかです」

 修士課程を終え、研究者生活に見切りをつけた後も京都に住み続けている。「物語が跳びはねてもどこかに着地できているのは、京都という町の独特な雰囲気のおかげです」

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