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著者に会いたい

楊貴妃になりたかった男たち 武田雅哉さん

[掲載]2007年02月18日
[文・写真]米原範彦

■いとおしい異装者の歴史

「服妖」。女装・男装という異性装を含む異装のことだ。中国人は古来、これを妖怪とみなしてきた。

写真武田雅哉さん

 北海道大教授の武田雅哉(たけだまさや)さんがまとめたのは、そんな妖怪史。春秋時代から現代までを扱う。自らの講義「怪物論」でも論じてきた。清代末期の「点石斎画報」50余点を中心に紹介し、たった一行の歴史記録も積極的に使った。「『服妖』は社会紊乱(びんらん)の兆しと受けとめられたのですが、実は、異性装は中国では結構あったのです」

 京劇の楊貴妃を演じ、女形「旦(たん)」として有名な梅蘭芳をはじめ、異装話が続々。なんと、後の中国の指導者となる周恩来も学生時代、新劇の「旦」を演じて蘭芳の称賛を受けたという。その証拠写真も掲載。白眉(はくび)は、纏足(てんそく)のような、つま先歩行を補助する「(きょう)」という女装アイテムの説明だ。「中国人は、どうでもいいようなことも無視せず、記録する」

 函館市で高校まで過ごした。進路面談の教師に、将来の夢を「仙人」と語った。中国文学に傾倒したのは大学2年から。だが、「水滸伝」などの本格小説ではない。清代末期に徒花(あだばな)のように生まれたチープな恋愛小説、はちゃめちゃな探偵小説のたぐいにひかれた。「西遊記」でも、ブタの妖怪「猪八戒」がツボにはまり、研究対象にしてしまった。

 「正道から、こぼれ落ちたものが、いとおしい。研究で光を当てたいんですが、当てると消えちゃう気もして。本当は薄暗いところで、ちらりと見るのがいいんですよ」

 本書の中で「さかしま」という単語を使い、ある中国詩を意訳。19世紀末の仏デカダン作家ユイスマンスにも、同名作があったが……。「人工美に包まれた主人公デゼッサントの生き方は理想かも」

 やっぱり、ゆくゆくは仙人か。

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