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禁断のパンダ 拓未司さん

[掲載]2008年3月9日

  • [文]丸山玄則 [写真]西畑志朗

写真拓未司さん(34)

■言葉が舌を刺激する

 料理の描写が秀逸だ。最初の結婚披露宴のシーン。オードブルの「フォアグラのメレンゲ仕立て」が登場すると、一気に食の世界に引き込まれる。言葉が舌を刺激する。主人公の若き料理人幸太と、人間離れした味覚を持つ料理評論家の交わす会話は、味覚そのものを視覚化したような鮮烈な印象を残す。

 的確で魅惑的な食事のシーンを核にした神戸が舞台の「美食ミステリー」は、第6回「このミステリーがすごい!」の大賞を受賞。拓未司(たくみ・つかさ)さんは作家デビューをはたした。

 料理への愛と豊富な知識を感じさせるが、それもそのはずで元料理人。岐阜県の高校卒業後、大阪あべの辻調理師専門学校で学び、フランス料理店に勤めたり、友人とビストロを共同経営したり。プロの経験が、指先からにじみ出た。

 「主人公が語ることは自分自身の考えを反映しています。熱は入りましたが、料理のパートで執筆に苦労した記憶はないです」

 転機は突然だ。店の経営が厳しく、20代後半でサラリーマンに「転職」し、ピザチェーンの正社員として働いていた31歳の時、宮部みゆきの『火車』を読んで感動。高卒後に1冊も小説を読んでいなかったのに「作家になる」と一念発起。「なれば」と妻。同じチェーンのアルバイトに身分を変えて生活費を稼ぎ、「句読点やカギ括弧の使い方を勉強しながら」、江戸川乱歩賞と「このミス大賞」を目指して書き続けた。

 「周りはもちろん『無理やろ』と思っていた。でもそれがエネルギーになった」。2年でデビューを果たし、「運が良かったが作家への扉を開けただけ。これからが本当の勝負です」と気を引き締める。同じ主人公のシリーズ物となる次作を執筆中で、料理は格好の息抜きになるという。

表紙画像

禁断のパンダ

著者:拓未 司

出版社:宝島社   価格:¥ 1,365

表紙画像

火車 (新潮文庫)

著者:宮部 みゆき

出版社:新潮社   価格:¥ 900

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