[掲載]2008年3月30日
須田章七郎さん(58)
■筆を自由に、線の面白さを
「書道」は自己表現の芸術だ、と強調する一方で、手本どおりに書けたら上手と評価しているのは矛盾だし、生徒たちも失望する。そんな悩みから、高校教師の須田(すだ)章七郎(しょうしちろう)さんは70年代半ばから、書の基本技術を生徒が興味をもって習得し、自分の思いを書で表現できるようになる授業をつくろうと実践を続けた。本書はその集大成だ。
まず、手本から離れた創作授業という活動に目を開かれた。「それでもやはり古典が大事だという思いはなかなか抜けなかった」が、80年代半ば、踏ん切りがつく機会が訪れた。「異動先の高校は、やや荒れていた。この子たちに、やれ中国の書がどうだこうだと言っても、受け入れない。教科書は使わず、前任校で模索してきた授業のうち、生徒たちが食らいついてきたものを組み合わせてみた」。ある時、「教室に入ると、なりはツッパリの子たちが『先生、今度は何をやるんだい?』と聞いてきた」。
手本から離れるといっても、勝手・放任ではない。「筆は、弾力があるでしょ。立てると、こう。つぶすと、こう。それぞれ、どんな線、どんな字を書けるか。墨のことも、紙の使い方も。少ない履修時間の中で、凝縮して教えます」。そうして「筆を恐れない」ようになったら、しめたものだ。
「鬼の顔」を書く。それこそ筆を自由に使う。「その自由な使い方を、文字にもってくればいい」。また生徒自身が書いた「線」の面白さを知り、「その『線』を教科書に載っている古典に見いだす」とき、本当に古典を知るということになる。
「最初、書道界では浮いた存在になるとも思いましたが、生徒を変えるには自分が変わらなくては。実際、僕自身が大きく変わった30余年でした」
著者:須田 章七郎
出版社:大月書店 価格:¥ 1,890
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