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明日の言付け 一青窈さん

[掲載]2008年5月25日

  • [文]西秀治 [写真]東川哲也

写真一青窈さん(31)

■言葉も音楽なんです

 「言葉、とは」と書いて、続く答えは「思い出が形をかえただけの魔法かもしれない」。

 一青窈(ひととよう)さんが「CDのシングルを一気に50枚くらい出したような感じ」と言う初めての単行本は、詩と文章が溶け合った「魔法」がちりばめられている。

 「想(おも)いはことばを越えて いる アイタイ、は好きを越えて いる 待てない は時間を越えて いる」

 9・11テロがモチーフになった大ヒット曲「ハナミズキ」のくだりでは「意地悪な心の芽を摘んで、やわらかな気持ちが連鎖してほしいものだ。人が進化するとはそういうことであろう」とつづった。

 24時間、言葉を蓄積しているのだそうだ。電車やバスの中で女子高生の会話を収集し、小説の気に入ったフレーズに線を引いて、自分なりに書き換えてみる。パソコンに自作の辞書があって、例えば「N」の項には松平健、高倉健、投票権といった言葉が並ぶ。歌詞づくりの際に「ここは『ん』で終わりたい」と思ったとき、威力を発揮する。

 「でも、言葉の蓄積と実体験はいつもカオスの状態。何かもう1個、鍵を渡されたときに、例えば美術館で写真を鑑賞していて、一つの絵として詞が完成するんです」

 それぞれの言葉も句読点も、空白さえも「私にとっては音楽なんですよね」。少しでも違和感があれば、50回でも100回でも書き直す。

 本のタイトルは自分で考え、決めた。「大切な人に、伝えたいことを伝えられないのが人間。大切な人ほど、あとまわしになってしまう。父と母に対してがそうだったんだけど、言えないままに他界してしまった。どんな形でもいいから、好きな人には思いを伝えてね。それが一番言いたかったことなんです」

表紙画像

明日の言付け

著者:一青 窈

出版社:河出書房新社   価格:¥ 1,400

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