[掲載]2008年7月6日
矢作俊彦さん(57)
■しょぼい世の中と対決
「あらゆる偶然が、火花のように連なってできる映像ってあるんですよ」。矢作俊彦(やはぎとしひこ)さんは淡い光が落ちたバーで、74年から75年に放送されたテレビドラマ「傷だらけの天使」を語った。
主役でアナーキーなチンピラ木暮修を演じたのはショーケンこと萩原健一。弟分を演じた水谷豊の「兄貴ぃ〜」というせりふが人気だった。「あの時代の、あの年齢の2人でなければできなかったドラマ。当時、すごく共感を感じました」
ショーケンと同世代。作品は、ショーケンとテレビシリーズ原案者の了解を得て、新たに描いた。30年以上も消えていた木暮修が現れ、息苦しく、せこく、しょぼくなった世の中と対決する。「歩いているだけで監視カメラとけんか。最初の一歩からけんか。そうならざるを得ない」
アナーキーだった人間の60歳を前にした心象もちりばめた。「30年もだれにも頼らず生きてきたら、それだけでも人って成長する。ぼくだって子どもっぽいと言われることがあるけど、それでも25歳のときと比べりゃ、いろんなこと見聞きして少しは成長してるから」
17歳で漫画家デビュー。ハードボイルド小説、ラジオドラマの脚本、映画監督とジャンルを超えて疾走してきた。早熟ぶりを「アンファンテリブル」(恐るべき子ども)と評されたこともある。「いや、あのころはみんなアンファンテリブル。『30歳以上は信じるな』と言いながら、もしかしたら自分は才能があるとみんなが思っていた。変な、すごい人がいっぱいいた」
いまの若い人の印象。「何かする前から自分を規定して、勝ち組とか負け組とか言う。20代のころって、たとえどんなに貧乏していても、負けてなんかいないんじゃないか」
著者:矢作 俊彦
出版社:講談社 価格:¥ 1,785