 |
|
女優・大河内奈々子さん(左)と作家・市川拓司さん(右)
|
『いま、会いにゆきます』で女性たちの心をしっかりつかんだ純愛ブームの旗手、市川拓司さんと、注目の女優でかつ無類の読書家、大河内奈々子さんが、恋愛小説からコミックまで、一気に語りつくした1時間。2人の恋愛小説論、泣かされた一冊に、どっぷりとひたってください。
◆大河内奈々子 おおこうち・ななこ 女優。「岸和田少年愚連隊」でデビュー。昨年、主演のドラマ「牡丹(ぼたん)と薔薇(ばら)」で注目を集める。現在、舞台「グッバイ、チャーリー」出演中。1日1冊読むという読書好き。東京都出身。
◆市川拓司 いちかわ・たくじ 作家。「Separation」でデビュー。03年発表した「いま、会いにゆきます」は映画化され、純愛ブームにのって大人気に。最新作は「弘海 息子が海に還る朝」。東京都出身。
<大河内> 市川さんの作品には、穏やかで優しい気持ちがたくさん書かれていますね。
<市川> そうですね。嫌な感情というのは、あまり書いていないと思います。
<大河内> 心をわしづかみにされて、泣かされます。私は1日1冊のペースで本を読むのですが、市川さんの作品は1日で読むのが惜しいので、3日くらいに分けてゆっくり読みます。
<市川> そういう読者に出会えるのは、作者にとって一番うれしいですね。
◆小説は妻のために◆
<大河内> 『いま、会いにゆきます』も『そのときは彼によろしく』も、すてきな恋愛が描かれていますよね。そもそも小説をお書きになったきっかけはなんですか?
<市川> 妻が妊娠して仕事を辞めた時に、彼女を楽しませてあげようと思って書き始めたのがきっかけなんです。
<大河内> すてき!
<市川> 今でも、彼女のために書いているところがありますね。妻を喜ばせるのが好きなんです。もともと彼女は年に10冊くらいしか本を読まない人だったので、そういう人の心にもちゃんと響くように書く、ということを心がけています。
<大河内> だから市川さんがお書きになる本は、多くの人に伝わるんですね。最新刊の『弘海』は家族のお話ですけれど、私はお父さんとお母さんの恋愛の話だとも思えました。それに息子の弘海君の初恋の話もあって、胸がキュンとしました。
<市川> そうですか。
<大河内> 最初は悲しいお話なのかな、と思いつつ読んでいったら、未来へつながるポジティブなお話で。幸せな気持ちで本を閉じることができました。
<市川> そうなんです、最初は悲しい話だと思った読者の方が多いようなんですが、そんなつもりはなかったんですよ。
<大河内> お母さんが魅力的ですね。多くを語らずに、ずっと家族の側にいる。彼女の空気の温かさが伝わってきます。もし小さい頃に『弘海』を読んだら、弘海君の気持ちしかわからなかっただろうけれど、大人になって読んだからこそ、お父さんやお母さんの気持ちもわかる。この年になってこの本に出会ってよかったと思います。読んで、母親の持つ愛情深さを感じて、自分もお母さんになりたいと思いました。いつか、子供を産んだら、絶対に子供に読ませます。
<市川> わかってくれるといいですが……。
<大河内> わからせます(笑)! 市川さんご自身は、普段から恋愛小説は読みますか?
<市川> 僕は恋愛を読むのは好きですが、「恋愛小説」というジャンルはないような気がするんです。どんな小説でも、恋愛は必ず絡んできますから。小さい頃からよく読んでいるSF小説も、恋愛が絡んでくるものが好きですね。恋愛って、一番煮詰まった人間関係。そこを見られるのが楽しい。
◆「恋愛」もいろいろ◆
<大河内> そう言われると、サスペンスの中でも、このラブストーリーがすてきだな、とか、この恋はすごいな、と思うものもありますね。小池真理子さんの『恋』はミステリーですが、大人の恋って怖いな、と思ったり……(笑)。ダニエル・スティールも泣かされる。どうしてこんなに悲劇が重なるのだろうと思って。
<市川> どの本を読んだのですか?
<大河内> ほとんど全部読んでいます。特に泣いたのは『二つの約束』かな。でも、泣き虫なので、ほとんどどの本でも泣いています。
<市川> ミステリーでいえば、僕はトマス・H・クックの記憶三部作が好きだったのですが、その中の『夏草の記憶』なんかは恋愛が絡んでいる。やるせない感じなんです。
<大河内> どうしてですか?
<市川> もう、死ぬほどの片思いなんですよ。そして主人公の男が、僕の好きなタイプ。自分に自信がなくて、メガネをかけていて、ひょろひょろしていて、どちらかというと、教室の端にいるタイプ。それが、たまらない。
<大河内> 片思い小説ですね(笑)。ひと言で恋愛といっても、いろいろなタイプがありますよね。私は林真理子さんの小説もよく読むのですが、『不機嫌な果実』なんかは不倫を描いていて、すごくドロドロしていますね。現実の世界ではあまり起きないことなので、本の世界に入り込んでしまいました。
<市川> 大人の恋愛の世界ですね。
(続きは6月17日(金)掲載です)