『奥の細道』の文章を全50章に再構成。薄く印刷された書き文字を鉛筆でなぞりながら、深川、千住……と1日1宿、最終地の大垣まで、芭蕉の旅と文を体験してゆく仕掛け。「読者が自分と向かい合う時間をもてるように」と、編集の浅井四葉さんが発想した形式の本だ。大人向けのドリルや塗り絵コーナーに置かれる本として編集したが、予想に反して徐々に一般書として扱われるようになった。
「他界した夫と一緒に旅行している気持ちで書いています」
「育児で外になかなか出られないのですが、書くことでストレス発散になっています」
「親の介護の合間に少しずつ書き写しています」
芭蕉の句「夢は枯野(かれの)をかけ廻(めぐ)る」そのまま、実際に旅に出られない人をはじめ、愛読者カードの感想は「人生を感じさせるものが多い」と浅井さん。
本書がここまでのベストセラーになるには、三つの「流れ」があったという。子どもが親に贈るなどの「家族つながり」、芭蕉を中心とした「俳句ファンつながり」、女性を中心とした「近所の奥さんつながり」。年齢層は、20代まで、30〜40代、50代以上がそれぞれ3分の1を占める。女性が7割。
また何より、書き文字の魅力は大きい。「一枚の絵のようだ」といった感想も届く。書名にある「えんぴつで」というのもポイントだ。「多くの人が鉛筆ノスタルジーをもっていると思いました」と浅井さん。「撥(は)ねや払いの感触も、鉛筆だと感じることができますから」
「文字がいとおしくなりました」といった感想を見ると、パソコンの使用で遠ざかっていた書き文字の魅力が再発見されたということだろうか。