00年に刊行が始まり、シリーズ累計450万部という人気ノベルの最新刊。
主人公のキノは、生まれた国の習わしである「子供を大人に作り替える“手術”」を拒否して、12歳の時に旅に出る。相棒は、人の言葉をしゃべる二輪車(モトラド)・エルメス。出会った師匠に射撃を学び、一人で生きるすべを身につけたキノは、さまざまな国を訪れながら旅を続ける。
国にはそれぞれ特徴がある。深い問題を抱えていることもある。10巻目となる本書も、行き過ぎた動物保護法がある国、企業が人々を欺く国など、現実世界と微妙にリンクした国々が舞台となる。そこに生きる人々、彼らとかかわるキノたちの姿を1話完結の短編形式でつづるのがシリーズの基本スタイルだ。
発行元であるメディアワークスの担当編集者・小山直子さんによると、読者の平均年齢は16歳前後。女性がやや多い。「若い読者の皆さんからは、『小説を初めて読んだ』『いろいろ考えさせられました』といった声が寄せられてきます」。小学生のファンもいるが、エンターテインメントとして楽しむ大人の読者も少なくないそうだ。
ひとつひとつのストーリーには寓話(ぐうわ)のような趣がある。だが描かれるのは、善悪がはっきり分かれる単純な世界ではない。まだ10代のキノも決して無垢(むく)ではない。時に武器を使いながら“汚れ仕事”を引き受ける。そして、「物語の中で、キノ自身は結論を出したり、国のあり方を論評したりはしません。読み手が考えるかたちなんです」。
世界を縛る“大人の都合”を、押しつけがましくなくあぶり出すキノのクールな姿。そこに、現代の読者が共感できる魅力の源があるのかもしれない。
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2刷・30万部