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売れてる本

十七歳の硫黄島 [著]秋草鶴次

[掲載]2007年03月04日
[評者]木元俊宏

 1944(昭和19)年、17歳の夏。海軍の通信兵だった著者に転勤命令が下った。行き先は、東京の南1250キロの硫黄島。

 翌45年、太平洋戦争最後の年に、この島で日米両軍は激突した。戦いはおびただしい数の命を奪い、約2万1千人の日本兵のうち生還できた者は千人余り。著者は、そのひとりだ。

 本書は、著者が戦後60年、仕事の合間に書きつづってきた原稿から硫黄島の戦いの部分を抜き出してまとめられた。その筆は、想像を絶する玉砕戦の現実、兵士たちの苦闘の姿をよみがえらせる。

 「不連続に聞こえる断末魔の絶叫。その声は途切れることがない。悲惨な形で身体の部位が空中に舞い上がり、それに持ち物類が混ざって落下する。『おっかさーん』と叫んだ」

 「負傷兵がゴロゴロと寝かされ、悶(もだ)え苦しんでいる。唄(うた)うもの、狂気の沙汰(さた)で怒鳴る者、ここに至って見知らぬ者同士で慰め合う者もいる。誰もが正常ではいられなかった。こことて食べ物や水があるわけではない」

 担当編集者の細井秀雄さんは言う。「栗林忠道中将のようなヒーローは、この本にはいません。前線の兵士の視点から書かれた稀有(けう)な記録です。戦い全体を俯瞰(ふかん)する奥行きのある記述を可能にしたのは、通信兵で戦況を知りうる立場の著者が、たまたま米軍上陸を間近に見る陣地にいたからでしょう」

 戦争体験世代から高校生まで、読者層は幅広い。昨年末公開された映画「硫黄島からの手紙」などで関心を持った人もいる。男性が多いが、女性も3分の1を占める。「涙が止まらなくなった」「尊い犠牲の上に築かれた平和の重みを思った」といった感想が寄せられている。

    ◇

 7刷8万部

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