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売れてる本

カラマーゾフの兄弟 [著]ドストエフスキー

[掲載]2007年05月06日
[評者]小柳学(編集者)

 放蕩(ほうとう)な地主フョードル・カラマーゾフ、性格の異なる3人の息子たち、料理人のスメルジャコフ――物語を紹介するまでもない、もっとも有名な世界文学を、ロシア文学者が従来とはちがう趣でわかりやすく訳した。

 たとえば、修道院のゾシマ長老は、予言者めいた口調で訳されがちだったが、親近感すらある人物として、また長男ドミートリーは豪放なだけでなく傷つきやすさを併せもった実に魅力的な人物として描かれる。「内向的で暗い作家ではなく、開放的でジョークが大好きな作家として、本来の文体の勢いや流れを生かしたのが亀山訳です」と担当編集の川端博さん。

 栞(しおり)に登場人物の一覧を記し、読者がその都度確認しやすいように配慮した。また各巻の巻末で、物語の背景を解説している。

 第1巻が昨年9月に刊行。これまで3巻総計で7万8000部。「古典文庫としては、きわめて異例の売れ行きです」と駒井稔編集長。

 読者は20代が5割、男女半々。予想以上に若い読者が多い。「幼児虐待、テロリズム、金銭トラブル、男女間の愛憎、この本のなかに現在のすべてが描かれている。世界をまるごと抱く感じを持つのではないでしょうか」と川端さん。「仕掛けがちりばめられた物語が面白い」という声が寄せられるなど、若い人は難解な古典ではなく、ミステリーを手にしたときのような軽い気持ちで読みこなしている面もあるようだ。

 第4巻と、エピローグとドストエフスキーの生涯と作品解説を収録した第5巻が7月に刊行予定。

    ◇

 光文社古典新訳文庫、第1巻=6刷3万3000部、第2巻=3刷2万4000部、第3巻=2刷2万1000部

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