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売れてる本

孤独のグルメ [原作]久住昌之 [作画]谷口ジロー

[掲載]2007年11月25日
[評者]小柳学(編集者)

 主人公は個人で輸入雑貨の貿易商をしている中年男、井之頭五郎。彼が仕事の合間にメシを食べる様子をひたすら描いたマンガである。

 東京の赤羽。早朝に商品を納品して、さて、何を食べるか。見つけた店は午前からやっている飲み屋。すき焼きを食べようとしたが、まだやっていないと言われて、しばし思案する。よく見れば、客は青りんごサワーを飲んでいたりしてにぎやかである。〈なんなんだ この雰囲気は〉と、活気にあおられて、うな丼といくらどぶ漬け、生ゆば、岩のりを注文……。

 ひとりで初めての店に入るときの勇気、なかの居心地、食べながらなんとなく思い出すことなどが巧みに描かれる。

 空腹を満たすのは、ほかに石神井公園のカレー丼とおでん、神宮球場のウィンナー・カレー、池袋のデパート屋上のさぬきうどん、高崎市の焼きまんじゅうなど、どれも「ミシュラン」のミの字も感じさせないシブい食べ物ばかりだ。

 94〜96年に雑誌連載、97年に単行本、00年に文庫化。読者層は10〜30代が中心。「気がついたら在庫がなくなっている」というジワジワとした売れ方で、ネットでよく取り上げられる。

 女性の読者が4割も。版元販売グループの村上雅人さんは、外で「一人メシ」をする女性が増えたことを理由にあげる。たしかに牛丼屋で女性をよく見かける。10年前はなかった光景だ。

 コンビニ・フーズをまとめ買いして食べる場面がある。「今では普通ですが、当時はこんな食べ方はなかった」と連載担当の壱岐真也さんはいう。社会の変化による新しい読者層が「孤高のグルメ本」を支えている。

    ◇

 21刷・8万8000部

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