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償い [著]矢口敦子

[掲載]2008年3月30日

  • [評者]瀧井朝世(ライター)

 「ごめんなさい! 今までこんな面白いミステリを紹介していなくて」「こんなにも悲しくてでも温かいミステリに出会えて本当に良かった」。昨年9月末、新宿の2軒の書店にそれぞれ掲げられた手書きのPOPが火付け役となり、4年以上重版のかからなかった作品が、幅広い読者層を獲得、今や30万部に届く勢いのベストセラーに。

 主人公は、ある残酷な出来事を機にすべてを捨てホームレスとなった元医師、日高。住処(すみか)とした町で殺人が相次ぎ、探偵役を担った彼は、ふとしたことから、かつて自分が命を救った少年が犯人では、と疑い始める。

 絶望と罪悪感を背負い苦悩する日高と、“不幸な人は、死ねば不幸を感じずにすむ”という、殺伐とした考えを持つ15歳の少年。他人の心を傷つけた者は、どう裁かれるべきか。無価値に思える自分の人生と、どう対峙(たいじ)したらいいのか。そんな切実な心の叫びが、強く響いてくる。

 著者は現代的な事象を交えた本格推理や、サスペンスを得意とする作家。「ご自身が病気のため小学校5年生から通学をやめ、通信教育で大学を卒業されたという背景もあり、作品には社会的な弱者に対する温かいメッセージがこめられています」と、担当編集者の菊地朱雅子さん。「本書も、人は絶対に誰かに必要とされている、だからみんなに生きて欲しい、という著者の思いがにじみ出ている。もちろん主人公が探偵役として活躍する、謎解きの骨格も非常にしっかりしています」

 深い感動と、推理小説としての面白さ。どちらもたっぷり味わえるのが魅力。そして「泣けた」「楽しめた」だけでない、深い余韻がいつまでも心に残る。

    ◇

 14刷・28万5千部

表紙画像

償い (幻冬舎文庫)

著者:矢口 敦子

出版社:幻冬舎   価格:¥ 680

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