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食堂かたつむり [著]小川糸

[掲載]2008年4月20日

  • [評者]小柳学(編集者)

 恋人がいなくなった。家財道具も持っていかれた。ショックで声をなくした倫子が向かったのは山あいにある故郷の村。どんづまりの中で思う。

 「たとえ衣服を剥(はが)され素っ裸にされたとしても、私は料理を作ることならできる」

 母親が大切にするブタ、エルメスの世話を条件に母親からお金を借り、物置を食堂に改造。

 1日1組限定。出てくる料理は、甘酸っぱい味がするルビー色のザクロカレーをはじめ、読んでどれも食指がうごく。食材は近所にあるものばかり。食べた人には小さな奇跡が起きる。母親と長年不仲の倫子は、自分の名は不倫の子だから付けられたと思い込んでいたが……。その秘密が最後にわかる。

 もともとは第1回ポプラ社小説大賞で最終選考にも残らなかった作品。編集者の吉田元子さんの目にとまり、1年以上かけて書き直した。

 草野マサムネ、岡野昭仁という人気ボーカリストの感想をオビに載せ、ほんわかとした絵本のようなイラストをカバーに使った。ジャケットを手にとるように買った人も多いという。

 読者の7割が女性、年齢は4割以上が20代。「食べることは生きることだというシンプルなメッセージが伝わってくる」といった感想が広がっている。

 すでに10万部以上売れているのに、本に挟み込んでいる読者カードが1枚も返ってこない。

 「編集部に届くのは著者あての長い手紙だけです。あとはみなさんブログで感想を書き込んで、本のよさを自ら発信している」と吉田さん。

 無名の新人作家の小説が発売直後から異例の早さで広まったのも、20代女性の発信力が大きいようだ。

    ◇

 13刷12万部

表紙画像

食堂かたつむり

著者:小川 糸

出版社:ポプラ社   価格:¥ 1,365

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