[掲載]2009年6月7日
■公の再構築を説く新たな姿
宮台真司氏の著作の中ではかなりわかりやすい部類とはいえ、しかし新書とは思えないほどの難解な文章と社会学の専門用語がちりばめられている『日本の難点』。10万部近いベストセラーとなっていることを、どう評価すればよいのだろうか。
宮台氏は1990年代、旧来の規範や倫理を害悪と見なして批判した。しかし日本社会の底が抜け始める90年代末以降、郊外化とコミュニケーションの断絶によって社会が包摂性を失い、しかもその包摂性の喪失をだれもが認識するようになってしまったと指摘するようになる。そして世紀が変わるころから、いま一度地域や「公」という中間共同体的なものを再構築すべきだと訴えるようになった。その転換は「ミヤダイの転向」と批判される結果にもなったのだが、しかし本書を読めばこれは転向などではなく、彼が一貫してリベラルで強い新自由主義的な社会を希求してきたことがよくわかる。彼は衆愚化し、漂流する人々の姿に絶望しながらも、あえてみずからが世間にコミットして公の再構築を説くことによって、ふたたび社会に「意味」を見いだしていくべきだと考えているように見える。
その意味で、彼の社会へのコミットメントの象徴となる初めての新書本がベストセラーになったことは、まことに喜ばしいと言うべきか。しかし気になるのは、この本のコンテンツがいったい誰に届いているのだろうということだ。
知的エリートと一般大衆が交じり合ってしまっていったん「ガラガラポン」となり、そしてふたたび格差社会の中で階級が再構成されつつあるいまの日本。そうした状況の中でこのミヤダイ本を受け止め、その主張を実現させようと考えるべき人たちは、いったいどのような層の人たちなのかを今ここでとらえ直さなければならないように思う。
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5刷9万3千部
著者:宮台 真司
出版社:幻冬舎 価格:¥ 840
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