[掲載]2009年6月14日
■抜け出せない「海堂サーガ」
舞台は人口10万の北海道・極北市。地場産業に乏しく財政難にあえぐなか、公立の極北市民病院も倒産の危機に陥っている。そこに非常勤外科医としてやってきた今中は、堕落しきった現場を目の当たりにすることに。さらには医療事故問題も絡んできて……。
銚子市立病院の休止問題を思い起こさせる題材だが、執筆のスタートはそれより前。著者は現役の病理医であり、以前は外科医として各地をまわり地方の医療問題を数多く見てきたという。医師としての問題意識と、作家としての想像力。双方が現実の出来事とシンクロしていく様が興味深い。
「このミステリーがすごい!」大賞出身のため推理作家のイメージもあるが、本書のオビにミステリーの文字はなく「メディカル・エンターテインメント」とある。確かに謎ときというより、アクの強いキャラクターの魅力や医療現場のリアリティーでぐいぐい読ませる。そのためミステリーファン以外の読者も取り込んでいるようだ。読者層は30〜40代がメーンで男女半々。最近になって女性が増えてきているという。
海堂作品が特徴的なのは各著作の関連の強さ。どれも一作品として成り立っているが、その中で何人かの人物が重複して登場するのだ。しかも単なる脇役ではなく、キーパーソンとして。だから海堂作品を一冊でも読むと、他の小説も追いかけたくなる。新作が出る度に、著作を渡り歩く読者が増殖していくというわけだ。その効果が、小説11作目となる本書の初版6万部、2カ月足らずで11万部突破という数字に表れている。
確かに読後、極北市民病院のさらにその先を知りたくなった。おそらくそれは、また別の小説で明らかにされていくはず……と思うと、もう次回作が気になって仕方ない。この壮大な海堂サーガに一歩足を踏み入れたら、なかなか抜け出せなくなるのである。
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6刷・11万5千部
著者:海堂 尊
出版社:朝日新聞出版 価格:¥ 1,680
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