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バンド1本でやせる!巻くだけダイエット [著]山本千尋

[掲載]2009年11月15日

  • [評者]佐々木俊尚(ジャーナリスト)

■手頃な「おとぎ話」の効用は

 牧歌的なダイエット本である。付録のバンドを使って体のゆがみを正し、筋肉を鍛えることでダイエット効果を狙うという内容が、人気テレビ番組で紹介されて以後、売り切れ店が続出している。この種の本は昔からベストセラーの定番だった。「久々にダイエットに挑戦しよう」「またリバウンドしちゃった」などと繰り返される、終わりなき日常の平凡なひとこまであり、中流社会の「おとぎ話」だった。しかし中流社会が消え去った現在、「おとぎ話」も終焉(しゅうえん)を迎えようとしている。

 フードデザート(食の砂漠)という言葉がある。都市環境の変化と格差社会の進行によって、生鮮食料品が安価に購入できる店が極端に減ってしまった地域のことだ。70年代ごろからアメリカやイギリスで問題になり、そしてこの「砂漠」にはジャンクフードがなだれ込み、結果として肥満社会を生み出している。アメリカに行くと、スーパーの野菜売り場が小さく、冷凍食品とスナック菓子が巨大な面積を占めているのに驚かされる。肥満で悩む人たちがダイエットに挑戦するテレビ番組では、参加者全員が「記憶のある限り、新鮮な野菜を食べたことがない」と答えた、という報道もあった。

 肥満大国となったアメリカと比較すれば、日本人はずっと健康的だ。しかしフードデザートは日本の郊外をも侵食し始めている。試みに地方のロードサイドにある大型商業施設に赴き、女性たちを観察すれば、ダイエットに成功し、どんどんスリムになる東京の女性たちと比べて、肥満気味の人が多いことが実感できる。都心のオーガニックブームをよそに、地方では多くの人がジャンクフードに埋没し、健康から遠ざかりつつある。「肥満格差」の到来、という思いがするのは私だけだろうか。

 そんなタイミングでの本著のヒットである。この実に手頃な「おとぎ話」が、「格差是正」にひと役買うといいのだが。

    ◇

 12刷60万2千部

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