がん消滅の罠―完全寛解(かんかい)の謎 [著]岩木一麻

2017年02月23日

圧倒的ディテールで描く『このミス』大賞の医療ミステリー

 2017年の第15回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作。前代未聞にして実現可能なトリックを圧倒的なディテールで描いている、と選考委員たちに絶賛された医療本格ミステリーである。がん治療の実態に真正面から切り込んだ著者は、国立がん研究センターなどで勤務経験のある元がん研究者だ。人の死後にも増殖を続けるがん細胞への恐怖心から、本書の奇想天外な着想を得たという。
 余命宣告された4人の末期がん患者が、多額の生命保険金を受け取った後、完全寛解(がんが消滅し、検査値も正常を示す状態)していた。なぜ、治療不可能なはずのがんが消えたのか。生命保険会社に勤務する友人から相談を受けた主人公の医師が、同僚のがん研究者とともに謎に挑む。「がんをミステリーの核とすることで、多くの人にがんに関心を持ってもらいたい」と著者。臨場感あふれる描写は、がん治療の現場を浮き彫りにするほか、登場人物の多彩な人間模様も楽しめる。何よりミステリー好きのみならず、医療関係者に対しても十分な説得力をもつ医療トリックが最大の見どころだろう。

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