わたしはこうして執事になった [著]ロジーナ・ハリソン [監修]新井潤美  [訳]新井雅代

2017年03月23日

華麗な時代を執事として生き抜いた輝きの日々をつづる

 本書に登場する5人の男性は、屋敷勤めの使用人である。本書は彼らの目を通じてイギリスの上流社会を浮き彫りにする。雑用係から下男、従僕、そして執事という出世コースを歩んできた経験を聞き書きとしてまとめた著者自身も、子爵夫人付きのメイドとして、その人生を捧げてきた。それだけに、男性使用人たちの本音を聞き出し、笑いと苦労、ときには涙ありの物語として見事にまとめている。愉快なエピソードが読者を飽きさせないだけでなく、使用人とは単に使われるだけではなく、雇用する側の人生においても欠かせない存在ということがよく分かる。
 学歴はなく、やんちゃだけれど執事としては一流の仕事をこなし、のちに商業世界で成功を収めたゴードン、伝説の執事として多くの同業者たちから尊敬を集めたリー、慎重さと自信と機敏さを兼ね備えたチャールズ、熱狂的な王室ファンのピーターなど、登場する誰もが個性的で、誰もが古い階級社会の魅力を語り、過ぎ去りつつある過去を思い慕う。イギリスの伝統的な「使用人文化」の変遷をユーモアあふれる文章から読み取ることができる。

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