達人 吉沢久子―人生のぜいたく [著]吉沢久子

2017年03月23日

100歳の一歩手前でも、自由な心で日々を楽しく

 「とことん自由を楽しんで、『さよならぁ』と笑って、この世とおさらばする。それが今の私の目標です」。そうつづる著者は今年で99歳になる。文芸評論家の古谷綱武氏の妻として家事一切と認知症の姑(しゅうとめ)の介護を担いながら、生活評論家としても活躍してきた。65歳で夫を送ってから今日まで、独り暮らしをしながら執筆活動を続けている。経歴を読むとスーパーウーマンの手本のようだが、人となりは食べることが大好きな楽天家で、丁寧な暮らし方は幅広い年代の女性から支持されている。著者の近年の日常を記した本書からは、老いと向き合う日々の肩ひじ張らない心構えが伝わってくる。
 100歳近くなっても自立した生活が送れる理由のひとつは、「面白がりの精神」を持ち続けているからかもしれない。著者が大事にしている言葉は、亡夫が遺(のこ)した「美しいものを見逃すな」。人に対しても、内面的な美しさを心の拡大鏡で見るようにしているという。また、何事も自分の責任と覚悟を決めているから後悔はないと断言する。円く素直な心に一本通った芯の強さが、かくありたいという憧れをかきたてる。

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