県警外事課 クルス機関 [著]柏木伸介

2017年04月27日

公安の一匹狼(おおかみ)vs.冷酷な暗殺者 疾走感が半端ない公安ミステリー

 第15回『このミステリーがすごい!』大賞・優秀賞受賞作は、緻密(ちみつ)なプロットで構築された渾身(こんしん)の公安ミステリーである。主人公は、違法捜査もいとわず、“歩くひとり諜報(ちょうほう)組織”=「クルス機関」の異名をとる神奈川県警外事課の来栖惟臣(くるすこれおみ)。北朝鮮工作員が日本で大規模テロを画策中という情報を得るが、猶予はわずか1週間しかない。
 一方、尾崎陽一こと呉宗秀(オ・ジョンス)は、北朝鮮で過酷な状況を生き抜き、工作員として徹底した教育を受けてきた。ヘイト・スピーチを繰り返すナショナリスト集団にまぎれて母国に忠誠を尽くそうとするが、謎の女子高校生が現れたことから歯車は狂い始める。
 一匹狼の来栖はもとより、押し殺した人間味が見え隠れする呉、さらに警察内部の面々、在日コリアン・マフィアなど、随所で個性あるキャラクターたちが輝く。さらに複雑な警察の内部事情や国際諜報の現状など、臨場感ある描写により物語は一層深みを増す。右傾化する日本社会の危うさ、在日問題の闇なども盛り込みながら結末まで二転三転するストーリーに、引き込まれてしまう作品だ。

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