沖縄を売った男 [著]竹中明洋

2017年05月25日

前沖縄知事の足跡をたどり知られざる真実にせまる

 本書は、就任直後に沖縄の普天間基地の移設計画を進めようとする政府と激しく対立し、その後、膠着(こうちゃく)状態にあった普天間の返還に道筋をつけた仲井眞前知事に新たな光を当てたノンフィクションである。本書の挑発的な題名は象徴的だ。沖縄のマスコミは、県が埋め立てを承認した瞬間、「沖縄の心をカネで売った」とこぞって非難した。一方、前知事がその心の底で何を思い、なぜ誤解に満ちたレッテルに甘んじたのか、著者は現実に起きた出来事の裏にひそむ真実を切れ味鋭く解き明かす。
 現職の政治家たちがどのような約束をし、そこにどのような力学が働いたのか、多くの証言によって浮き彫りにされた事実に驚かされるだけではない。読者もまた安全保障問題に関し、国民の一人として避けて通ることができない決断を迫られるのである。仲井眞前知事のアイデンティティー、時の政権の度重なる迷走、アメリカと中国の圧力、さらには歴史のなかで培われた沖縄の文化と県民性などを裏づけ取材を通じて生き生きと描いた著者の力量は見事のひと言に尽きる。まさにノンフィクションの醍醐(だいご)味だろう。

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