ああ面白かったと言って死にたい―佐藤愛子の箴言集 [著]佐藤愛子

2017年05月25日

波乱の人生から紡ぎ出した刺激に満ちた箴言(しんげん)集

 「自分の人生を悲観したことは一度もなかった」という著者は、二度の結婚と離婚、そして借金、貧乏と、波乱の人生を闘い抜いてきた。豪快に笑ってやせ我慢をしながらも、人を羨望(せんぼう)せず、妬(ねた)まず、恨まず、おもねらず、正直にありのままに生きてきたのだという。苦難から逃げることを考えなかったからこそ、しなやかな強さを身につけた。しかし、その強さから生まれる言葉は、決して他者を切り捨てるものではない。齢(よわい)90を超えたいまも、多くの読者の共感を得ているゆえんだろう。
 本書は、老いや死、幸福、男と女といった人生の大きなテーマについて、著者の言葉を収めたものだ。「若者よりも沢山(たくさん)の人生を生きている」ことが老人の価値であり、老後の幸福は「誰かの役に立つ。報酬なしでだ。」といいきる。そして、やれ健康法だ、老後の楽しみだとジタバタせずに、「ああ面白かった」といって死にたいという。なんと胸のすく覚悟だろう。言葉の随所に、時代を超えてなお変わらない生きることの真理がにじむ。老いから若きに至るまですっと背筋が伸びる、刺激に満ちた箴言集である。

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