目ざめゆく心II―高度経済成長期の青春 [著]安曇野和子

2017年05月25日

日本が若かった時代を背景につづられた実話の青春物語

 戦争の足音が聞こえ始めた1937年に生を受け、戦中に幼少期を過ごした著者による自伝の第2部である。敗戦国・日本の復興が進んだ1952年、内気な少女だった和子は高校に入学する。初めてのメーデー参加、気になる異性の出現、心を許し合う親友の存在など、物質的には豊かではないけれども、ひたむきだった青春の日々がつづられている。やがて和子は東京女子大学に入学。日本が「もはや戦後ではない」といわれた時期、アルバイトで家計を助けながら、心理学の勉強に打ち込む。進路に迷ったり、勉強の難しさを痛感したり、少しずつ大人になっていった和子は、卒業後は東大の研究室の事務員となる。そこで知り合ったのが、後に夫となる水原である。結婚後は、3人の子どもに恵まれ、水原の留学先であるカリフォルニアでの暮らしを体験。折しもベトナム戦争が泥沼化する時代であった。
 激動期に青春時代を過ごしながら、和子の視線は冷静に周囲の状況と自分の内面を観察している。高度経済成長期の人々の暮らしをひとりの女性の生き方を通して活写した本書は、貴重な庶民史としても興味深く読める。

関連記事

ページトップへ戻る