〈私のコミック履歴書〉声優 河西健吾さん

2016年12月21日

コミック・ブレーク一覧

戦い続ける人に

――お仕事柄、マンガに触れる機会も多いと思いますが、子どものころはどんな作品を読んでいましたか。
河西 実家が喫茶店を営んでいたので、いつも「週刊少年ジャンプ」「週刊少年サンデー」「週刊少年マガジン」が置いてあったんです。だから、マンガは小さいころから身近な存在でした。

――そうでしたか。初めて単行本を集めた作品は?
河西 初めて全巻集めたのは『遊☆戯☆王』でした。小さいころは家にあった雑誌がメーンで、本格的に自分でコミックスを買うようになったのは高校に入ってからですね。『ラブひな』『ジゴロ次五郎』『カードキャプターさくら』……。意外と少女マンガも好きで、『彼氏彼女の事情』や『フルーツバスケット』もそろえました。『フルーツバスケット』はアニメを観(み)たのがきっかけ。主人公の優しさとか、淡い感じがする世界観の色合いが好きでした。

――大人になってからはどうですか。
河西 『カイジ』は大好きです。最初の方に出てくる「勝たなきゃゴミだ」という利根川の有名なセリフがあって、それがすごく刺さりました。仕事でオーディションに落ちるじゃないですか。もしかしたら、「彼はいいから他の作品で使おう」と思ってもらえることもあるかもしれないけど、オーディションを受けたその役は絶対できないわけで。勝たなきゃダメなんだって実感することが多いです。

――うーん、確かに……。
河西 「ヤングアニマル」で最近まで連載していた『自殺島』も面白かったです。自殺未遂をしたような人でも、環境が変われば生きる活力がわいたりする。環境ってすごく大事なんだな、と認識させてくれた作品です。

――「ヤングアニマル」といえば、アニメで主人公・桐山くんの役をやっている『3月のライオン』はどうですか。
河西 アニメ化が決まる前からよく読んでいました。SFやファンタジーではない身近な物語なので、誰もが共感できる要素が散りばめられた作品だと思います。

――河西さんの場合は?
河西 声優と棋士にも通じるところがあるな、と。『3月のライオン』は「戦い」の物語でしょう。棋士が勝たなければいけないのと同じく、声優もオーディションなどでひとつずつ役を勝ち取っていかなければいけない。共感できる部分は多々ありました。それは棋士や声優だけに限らず、他の仕事でも同じなんだろうと思います。

――そうですね。
河西 特に印象に残っている場面は第2巻の最後。妻子持ちの棋士が桐山くんに負けて、心ないひと言を浴びせる。声優にも、はたから見ていて「もっと真摯(しんし)に仕事に取り組んだらいいのに」と感じる人がいますから……。「なんでもっとがんばらないんだ?」という桐山くんのモヤモヤした気持ちや怒りはよくわかります。

――桐山くんというキャラクターをどう思いますか。
河西 もの静かで必要最低限のことしか口にしないんだけど、内に渦巻いているものは濃いですよね。二海堂くんと話すときなど、ときどき自分の心情を吐露する瞬間はあるでしょう。付き合っていく中で、距離が縮まってくれば本音の部分が見えてくる。すごく人間っぽいキャラクターだと思います。僕もけっこう桐山くんとクロスする部分があって、現場ではあまりしゃべらないし、静かに台本を読んでいるタイプなので。

――桐山くん以外に好きなキャラクターは?
河西 二海堂くんは好きですね。あるイベントで地方に行ったとき、ホテルでテレビをつけたら、たまたま村山聖さんの人生を紹介する番組をやっていたんですよ。後から二海堂くんのモデルになった人だと聞いて、なおさら二海堂くんが好きになりました。

――29歳の若さで病死した天才棋士・村山聖。現在公開中の映画『聖の青春』では松山ケンイチさんが演じていますね。
河西 はい。彼の生き様にすごく感銘を受けて……。重い病を抱えていて、もしかして将棋をやめたらもっと長く生きられたかもしれない。だけど最後まで棋士でありたい、という姿勢を貫いたわけでしょう。僕だったら、マイクの前で死ぬ覚悟。そんな姿勢で仕事ができるだろうかって……。いろいろ考えさせられました。
    ◇

かわにし・けんご(声優)
1985年、大阪府生まれ。アニメ『ダイヤのA』『べるぜバブ』『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』などに出演。現在放送中の『3月のライオン』(NHK土曜23時~)では主人公・桐山零を演じる。

関連記事

ページトップへ戻る