〈マンガ今昔物語〉夢はいっぱしの「スケバン」!

2016年12月21日

 スケバンはどこに消えてしまったのだろう?
 1990年代に入って「ツッパリ」が「ヤンキー」に変わるのと同時に、スケバンは滅びていった気がする。いつの時代だって不良少女はいるに決まっているが、リーゼントにボンタンのツッパリとともに、つぶれたカバンにロンタイ(ロングタイトスカート)のスケバンはめっきり見かけなくなった。
 スケバンが活躍したのは70~80年代のこと。マンガでは、例えばテレビドラマ化や映画化もされたヒット作『花のあすか組!』(高口里純)が1985年に始まっている。九楽あすか14歳、元「全中裏」側近“左”! もう、この肩書きからたまらない。ちなみに「全中裏」とは都内中学校の裏番組織のこと。全中裏を抜けて一匹狼のスケバンになったあすかは、特攻服やロンタイを身にまとい、全中裏の刺客やレディースの猛者と激しい抗争を繰り返す――という現在の少女マンガでは考えられない男前な物語だった。
 ところが今の時代にも、そんな昭和のスケバンにあこがれる少女がいる。「ヒバナ」連載中の『弁天ぼたん』(再田ニカ)だ!
 父の仕事の都合で幼いころからアジアの田舎を転々としてきた少女・弁天島牡丹(べんてんじまぼたん)は、伝説のスケバンだったらしい母の影響でスケバンにあこがれて成長。高校生になって念願の日本に帰ってきたが、「すでにスケバンはいない」と聞いて強烈なショックを受ける。しかし彼女はひとりではなかった。ぼたんの前に現れたのはリーゼントとロンタイで決めた敷島ミドリ。出会って早々の殴り合いを経て、ふたりはマブダチになるのだった!
 長身、巨乳、勉強もスポーツもできて注目される美少女の夢が「いっぱしのスケバンになること」というのが楽しい。ぼたんの考えるスケバンは単なる不良少女ではなく、「シマを守る」強い女。アナクロな義侠心(ぎきょうしん)に燃えて“まっつぐ”生きる彼女は、誰もが応援せずにいられなくなるだろう。
 基本的に難しいことを考えずに楽しめるコメディーだが、ぼたんが転校早々に仲良くなった小柄な少女・松風すみれの驚くべき秘密や、「伝説の海辺で2ケツ」を体験させてくれた好青年・竹さんの裏の顔など、気になるスパイスも利いていて飽きさせない。スケバンが絶滅した21世紀の日本で、ぼたんがどのように正義のスケバン道を突き進んでいくのか、今後の展開が気になるところだ。
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高口里純『花のあすか組!』全8巻(祥伝社コミック文庫) 1985年開始
再田ニカ『弁天ぼたん』既刊1集(小学館) 2016年開始

プロフィール

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伊藤 和弘

1967年、新潟県生まれ。新潟大学法学部卒業。編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。99年から朝日新聞「コミック・ブレーク」で、インタビューと作品解説を担当する。著書に『少年マガジン伝説』(電子書籍)、『男こそアンチエイジング』(日経BP社)がある。
Twitter:@itokazraita
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