〈私のコミック履歴書〉声優 山下大輝

2017年05月17日

隠した心が
もどかしい


――マンガ原作のアニメで声優をなさることが多いので、やはりマンガはお好きですか。
山下 最近は読む機会が減ってきていますが、好きですね。子どものころはたくさん読んでいました。

――とくに好きな作家や作品は?
山下 昔は全般的にバトル系のマンガが好きでした。トーナメント形式の1対1の戦いで、技の応酬だけでなく、魂がぶつかり合う感じがいい。ビームを出したり、体に何かまとったりするファンタジー的な要素もかっこいいなと思いました。最近読んだものでは、藤田和日郎さんの『からくりサーカス』と『うしおととら』。この2作品を含め、ちょっと古い作品を読むと、テンプレートなしの型破りさがすごくて、ストーリー展開を予想しても、いい意味で裏切られる。そういう作品には年月を重ねても変わらない面白さがありますね。

――自分の考え方や生き方が、マンガに影響された部分はありますか。
山下 小さいころ、寝る前に頭の中で、自分を主人公にした物語を繰り広げていました。そこにはいろんなマンガのキャラクターが、ごった煮状態で現れていました。原作に対しても、こんなふうにストーリーが進んだら、面白くなるんじゃないかなと勝手に想像したり。そんなふうにイメージを膨らませることは、声優という仕事においてとても大事なことだと思っています。例えば台本を見て、ここをこう演じたらキャラクターに深みが出るんじゃないかと想像力を働かせるところは、子どものころに培われたもので、それが大人になった今、しっかり生かせていると思います。

――少女マンガを読んだことは?
山下 昔、少しだけ読んだことがある気がします。現在放映中のTVアニメ『覆面系ノイズ』でユズ(杠花奏)役をやるにあたって、久しぶりに読みました。連載は『花とゆめ』で、まさにThe 少女マンガという雑誌ですが、『覆面系ノイズ』に登場する女性キャラはなぜかみんな男前なんです。意志が固くて、自ら行動を起こせる強さを秘めている。夢、目標に向かって、私は足を止めない、前に向かって突っ走る! という感じでかっこいいんですよ。そこが、福山リョウコ・ワールドなのかなって気がします。

――作品全体の感想は。
山下 この作品を貫くテーマは「ぼくたちはほんとうのこころをかくしてる」です。登場するキャラクターそれぞれが抱えている思いを隠している。誰にもいえない、いっちゃいけないと思う切なさは、きっと誰にでもあって、原作を読む人、アニメを観る人はそこに共感できるのではないかなと思います。演じていると、ユズの気持ちがもどかしくなってしまうんですけどね。また、ロックバンドの話でもあるので、原作では聴くことができない音楽を楽しめる点は、アニメならではの魅力です。

――ユズの役をどう捉えて演じていますか。
山下 第一印象はクールで、王子様っぽい顔のツンとした子でしたが、原作を読んだり、演じてみたりしているうちに、意外と表情豊かな男の子だということに気づきました。とても個性的なキャラクターたちに囲まれていて、周りのボケに対してまともに突っ込みを入れる。だから、主人公のニノ(有栖川仁乃)よりも、よくしゃべる。気持ちの流れというか、切り替えもすごく早くて、その感情の動きに僕自身も追いつかなければということが多々あって、結構演じるのが難しいキャラクターだと感じています。

――これから演じてみたい役どころはありますか。
山下 今まさにユズ役で新たなチャレンジをしている真っ最中なので、あまり考えられないです。僕の中では、ようやくユズという器ができたばかりで、その器をっもっと大きく広げて、ユズの魅力をいっぱい入れられるようにしたいという気持ちでいます。そのためには、スキルアップなど最大限の努力が必要で、目の前にいるキャラクターの魅力を最大限に引き出して最終回を迎えたいと思っています。この気持ちはほかの役を演じるときも同じです。
作った器は、きっとまた違うところでも生かせるでしょうから、どの収録も毎回、毎回、真剣勝負です。

――声優という仕事の醍醐(だいご)味は。
山下 ほかの人の、しかも想像上の人の人生を生きられるところ。自分の人生は1回きりですが、役柄を通して別の人生を何回も楽しめる感覚になれるところです。TVアニメの30分枠は、魔法を使えるとか、人ではないものになっているとか、異世界を生きることさえできる。そんなところがとても好きで、これからもこの感覚をずっと味わっていきたいと思います。

    ◇

やました・だいき(声優)
現在、『覆面系ノイズ』(杠花奏)ほか、『僕のヒーローアカデミア』(緑谷出久)、『Re:CREATORS』(水篠颯太)、『弱虫ペダル』(小野田坂道)などのTVアニメで活躍中。

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