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あの『プレイボール』が復活!(第85回)

 鬼才・コージィ城倉がやってくれた。なんと、1984年に亡くなったちばあきおの『プレイボール』の続編を『プレイボール2』と題して連載開始! 第1話が掲載された「グランドジャンプ」は今年最高の売れ行きを記録したという。前作の連載終了は1978年なので、実に39年ぶりの続編ということになる(単行本のオビをはじめ「38年ぶり」と紹介されることがやけに多いが、38年前の1979年に終わったのは『キャプテン』だ)。

 最近増えているリメークではなく、文字通りの“続編”というのがスゴい。コンセプトは「何も足さない。何も引かない」。ピンク・レディーの『サウスポー』やインベーダーゲームがヒットしていた1978年、主人公の谷口が3年生になってイガラシが新入生として入ってきた最終巻の続きをそのまま描く。連載開始時に「スポーツ報知」で受けたインタビューでは、「『違う人間が続きを同じテイストで描く』というのは、史上初ではないでしょうか」と語っている。実際は1954年に「少年画報」で連載していた『赤胴鈴之助』が、福井英一の急逝によって武内つなよしに引き継がれたという前例もあるようだが、本当にそれ以来かもしれない。
 もともと城倉の絵はちばあきおに近いにおいがあったが、今回は田中圭一(パロディーマンガの第一人者)ばりに絵柄を完全コピー! ぱっと見ただけでは、ちばあきお本人と見分けがつかない。荒川の河川敷から物語が始まる、外野手・島田のダイビングキャッチからゴロゴロ、丸井と井口が「夜の神社で特訓」など、なつかしい名場面の数々が再現されているのも嬉しい。左利きのファースト・加藤が右バッターボックスに入っているなど、細かいミスもあるとはいえ、原作に対するリスペクトはひしひしと感じられる。
 ピッチャーに1日200球(2試合分)の投げ込みを命ずる、毎週土・日で5試合の練習試合をこなすといった異様なまでの練習量も、スポ根全盛の1970年代ならありそうなこと。金属バットが急速に普及し始めていた当時、なぜ墨谷高校は金属バットを使わないのか、という「原作の謎」にも合理的な説明を試みている。
 それにしても、練習が終わった後、制服姿で毎晩10時を過ぎるまで神社で自主トレを重ねる丸井と井口。オーバーワークも心配だけど、夕食はどうしているのだろう?=朝日新聞2017年9月20日掲載