〈私のコミック履歴書〉落語家・作家 立川談四楼

2017年12月20日

立川談四楼さん

『目玉焼きの黄身いつつぶす?』9/おおひなたごう

いいとこに目ぇつけたな

――子どものころはどんなマンガを読んでいましたか。
談四楼 地元の町には本屋さんがなかったので、(群馬県)館林市まで自転車で30分かけて通ってました。最初は「少年」や「少年画報」みたいな月刊誌だけだったんだけど、そのうち週刊誌が出てくるんですよ。毎週、友達と「(週刊少年)マガジン」と「(週刊少年)サンデー」の分担を決めてね。ほら、自分の小遣いだけだと両方買えないから。当時はちばてつやさんの『紫電改のタカ』なんて好きでしたねぇ。

――好きなマンガ家はいますか。
談四楼 質、量ともに手塚治虫先生はすごいと思いますよ。立川流ができたとき、手塚先生が顧問になってくれたんです。(立川談志)師匠に「こいつはモノを書いてるんですよ」って紹介されたとき、「どんなものを書いてるの?」ってすごい興味を持って、いろいろ聞いてくださって。そんな経緯もあって、手塚先生の作品はたくさん読みました。『ブラック・ジャック』もいいけど、私が特に好きなのは『雨ふり小僧』という短編。とても切ない話で印象に残っています。

――ご自身の小説がマンガ化されたこともありましたね。
談四楼 はい、『ファイティング寿限無』ですね。『はじめの一歩』ほど人気出なかったけど(笑)。小説のマンガ化とは別に、「モーニング」に原作を提供したこともあるんですよ。さだやす圭さんが描いてくれた『山遊亭海彦』っていう……。

――破天荒な落語家が主人公の。毎週楽しみにしていました!
談四楼 最近、『目玉焼きの黄身いつつぶす?』というのを読みました。ひたすら「食べ方」にこだわったマンガで、これは面白かったですね。落語のネタにもあるんですよ。好物をあげていってね、「オレぁ、刺し身だ」「いいねぇ。あったかいオマンマによくって、酒の肴にもいいてぇやつだ。ピリッとワサビ利かせてな」「ううん、ジャムつけて」という(笑)。納豆ひとつ取っても、しょう油かタレか、大粒か小粒か、ネギはどうするか、「砂糖入れないの?」なんてヤツが出てきて驚いたり。みんな、自分の食べ方が普通だと思ってるから、異様に盛り上がるでしょう。まず、その着眼点ですよ。いいとこに目ぇつけたなっていう。

――特に印象に残ったエピソードは?
談四楼 たとえば「卵かけご飯」は私も主人公の二郎と一緒でした。昔は卵を先に器に割って溶いていたのに、いつの間にか「直乗せ」になっていて。というのも子どものころは卵が貴重品で、ひとつの卵でご飯を2杯食べていたから(笑)。あとは「焼肉に白メシ」。焼肉はみんなでよく行くんだけど、しゃべって飲んで、なかなかご飯は食べられないでしょう。

――そうですね。
談四楼 少し前、アルコールなしで「カルビに白メシ大盛り!」って何年ぶりかで食べたら、これがうまい!タン塩ではダメ。カルビも上カルビじゃなくて、安い並のほうが白メシには合いますね。秋田から二郎の両親が上京してくる話も良かった。寿司に煮切りしょう油を塗ってあるのに、自分でしょう油をつけて食べてしまう。私も北関東の人間なので気持ちはわかるんですよ。煮切りはおいしいけど、少しもの足りないときがある。一方で煮切りを使う寿司屋はおおむね高級店だし、二郎はショックだったでしょう。その親子の心情がよく伝わるし、幅広い世代の人が共感すると思います。

――好きなキャラクターはいますか。
談四楼 ワードバスケットが得意な服部。一見いかつい割りに繊細なところもあって好きですね。二郎は着ぐるみアクターという変わった仕事をしているし、彼女(みふゆ)はお笑い芸人でしょう。食べ物の話だけじゃなくて、仕事や恋愛のドラマもしっかり描いている。その三位一体の案配もちょうどいいんですよ。

    ◇

たてかわだんしろう。1951年、群馬県生まれ。70年、立川談志に入門。83年、落語立川流真打ちに。小説家としても活躍している。1月5日、東京・日暮里のサニーホールで行われる「立川流日暮里寄席」では初席のトリを務める。

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