〈くるり・岸田繁の奇想転外〉僕たちの新世界 [作]せきやてつじ

2017年12月20日

岸田繁

『僕たちの新世界』1

どうしても熱と血の気の多さが盛り込まれてしまうのは絶対的魅力

 イタリア料理店を舞台にした『バンビ〜ノ!』など、熱のこもった画風と作風で知られる、せきやてつじ氏の新作。
 舞台は東京都日野市。犯罪や事故などによる「未来の死」を知る女子大生、絢女(あやめ)と出会った主人公とその友人は、不思議な魅力を放つ彼女が、犯罪や事故を未然に防止していることを知る。彼女と行動を共にする主人公たちは、数々の事件に巻き込まれながら、これから起こりうる恐ろしい出来事を未然に防ぐべく立ち上がる。
 ざっくりとした設定や描写の粗さが気にならないわけではない。ストーリー自体の面白さとは裏腹に、登場人物の個性がぼやけ気味で、心理描写も物足りない部分がある。
 それでも読後に独特のインパクトを残す彼の作風というのは唯一無二であり、物語のスピード感と、シンプルながらこってりとした画風があとを引く。繊細でアーティスティックな日本の漫画、というよりは80年代ハリウッド映画的な豪快さがある。これからどのような「新世界」を見せてくれるのかが肝である。

    ◇

きしだしげる。京都府生まれ。ロックバンドくるりのフロントマン。作詞作曲の多くを手掛け、多彩な音楽性で映画のサントラ制作、CMやアーティストへの楽曲提供も行う。2016年より京都精華大学の客員教員に就任。京都市交響楽団の依頼を受け、自身初の交響曲「交響曲第一番」を完成。京都での初演プログラムを収録したCDが発売中。

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