〈くるり・岸田繁の奇想転外〉碧いホルスの瞳 ―男装の女王の物語―

2018年02月21日

岸田繁さん

『碧いホルスの瞳 ―男装の女王の物語―』4

ぐいぐい読ませる力が魅力の価値ある作品

 犬童千絵さんによる痛快な歴史モノマンガ作品。舞台は古代エジプト。当時の文化や生活、王族のルールなどをリアルに描きながらも、現代社会への痛烈な風刺になっている作風はたいへんスリリングである。骨太な画力や表現力は、繊細な世界観を伝えるための言わばエンジンのようなものとも言える。まるでよく出来た映画のような娯楽作品でもあり、とにかく猛烈に面白い。シナリオ設定、キャラの立たせ方、絵柄や描写のタッチなど全てにおいて勢いがあり、ぐいぐいと読ませる力がある。どんな人でも引き込まれてしまうような魅力ある作品だ。
 「事件」を、ドラマとしてどのように描くかが、この手の作品にとって最も重要なポイントである。歴史的事実との距離感が絶妙であり、小難しく感じない。あと何度も言いますが、この作品にはとにかく力がある。
 「読まず嫌い」や「聴かず嫌い」に、読ませたり聴かせたりすることはとても難しいことである。ただ、この作品においては、数少ない例外となり得るだけの力がある。何度も言いますが、力のあるマンガ作品なのです。まるで手塚作品のように。

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きしだしげる。京都府生まれ。ロックバンドくるりのフロントマン。作詞作曲の多くを手掛け、多彩な音楽性で映画のサントラ制作、CMやアーティストへの楽曲提供も行う。2016年より京都精華大学の客員教員に就任。

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