〈くるり・岸田繁の奇想転外〉BLUE GIANT SUPREME [作]石塚真一

2018年03月22日

岸田繁さん

『BLUE GIANT SUPREME』1

■次なる世界は、遠く遠くの連峰の中腹あたり、長い長い尾根、である

 本作は、山岳救助を題材にしたヒット作『岳』の作者、石塚真一氏の『BLUE GIANT』の欧州編にあたる。主人公のサックス奏者、宮本大がミュンヘンへ旅立つところから物語は始まる。
 音楽を題材に漫画を描くことは、とても難しいだろう。『のだめカンタービレ』や『ピアノの森』のヒットによってひとつの方法論が確立されたとは言えど、題材はジャズ、しかもテナーサックス(花形楽器のようでいて、扱いの難しいものと想像する)、そして何よりもアメリカではなくドイツである。判り易いシチュエーションではないが、今後の物語に大きなのりしろを残している。
 石塚氏の真骨頂とも言える独自の筆圧と、堅苦しくなるギリギリのところで解放する緊張感のコントロールは大変スリリングである。『岳』や前作で垣間見えていた「ホッとする柔らかさ」と対極にある緊張感と仄暗い感覚は、人間模様から音模様へとシフトする本気を感じる。
 元々黒人音楽だったジャズは、白人の手へ、そして近年は欧州の民俗音楽やクラシック、ヒップホップ等を吸収しながら現代ジャズへと発展と成長を繰り返している。ジャズは、可能性の音楽になったのだ。日本人プレーヤーが国際的に置かれている状況など、どれほど「新しいジャズ」の価値観と氏の世界観がリンクしていくか、そんな注目もしていたい。

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きしだしげる。京都府生まれ。ロックバンドくるりのフロントマン。作詞作曲の多くを手掛け、多彩な音楽性で映画のサントラ制作、CMやアーティストへの楽曲提供も行う。2016年より京都精華大学の客員教員に就任。京都市交響楽団の依頼を受け、自身初の交響曲「交響曲第一番」を完成。現在、くるり通算31枚目となるシングル「その線は水平線」の発売を記念して、『くるりライブツアー「線」』が絶賛開催中。

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