数学の迷宮を旅する

数学の迷宮を旅する

 この世界は、複雑なようでいて、単純。
 原材料はふたつしかありません。
 変わるものと変わらないもの。
 人の気持ち、社会の制度、物の価値、目に映る風景、事のよしあし。これらは一瞬のうちにか、長い年月をかけてか、時間の違いはあれど、今の姿が、そのまま永遠に続くことはありません。
 世界のほとんどは、こうした「変わるもの」でできています。
 ところがごく一部分に「変わらないもの」があります。
 「数学」もその一つ。
 ピタゴラスやユークリッドが頭を悩ませた問題、見いだした真理、これらは今後何千年の時を経ようと、変わることはありません。
 変わりゆく世界の中で、ほんの少しの、変わらないものを見つける——数学者はそのため、出口があるかどうかわからない迷宮に飛び込む探検家なのかもしれません。
 そんな数学という迷宮の奥深さを、気軽に楽しめる本を集めてみました。

偏愛的数学 I 驚異の数

■世界が違って見える数の不思議

 「偏愛的」数学とは、よくも名づけたものである。 本書は、こんな書き出しの訳者による序文から始まる。原題は「数学の驚異」とごくごく平凡で、「偏愛」なる表現はむろんない。邦訳に当たって編集部が考えたそうだ。 だが、まさに言い得て妙。数学といえば、論証に偏りがちで、そこが嫌われがちな…もっと読む

偏愛的数学 I 驚異の数

著者:アルフレッド・S.ポザマンティエ、イングマール・レーマン、坂井 公  出版社:岩波書店

ベッドルームで群論を――数学的思考の愉しみ方

■暮らしの中の数学、夜ながの友に

  日常生活から宇宙まで、数に変換できるものは何でも変換して数え上げ、アルゴリズムを探し、ランダムなものさえ操り、利用する。人間は古来そういう生きものらしいが、科学雑誌の編集者である著者も、見事にそんな日常生活を送っている。 たとえば眠れぬ夜に、著者を含めた欧米人は、ベッドのマッ…もっと読む

不可能、不確定、不完全―「できない」を証明する数学の力

■数学の枠広げる、難問にかける夢

 「偉大な問題はえてして説明するのがわりと簡単で、解くのが難しい」と本書にあるが、実にそれゆえに、人は数学にドキドキする。たとえば、4以上の偶数は二個の素数の和である、という予想は子どもでも立てられるが、二五〇年以上経てもなお証明に成功した者はいない。 けれども、難しい問題の解を…もっと読む

数学は最善世界の夢を見るか?――最小作用の原理から最適化理論へ

■私たちとこの世界、なぜこうあるのか

 あなたはテッド・チャンという作家の短篇(たんぺん)小説「あなたの人生の物語」をすぐに知るだろう。一九九八年に発表されたこの短篇の主人公は言語学者。彼女は地球に飛来した宇宙人とのコミュニケーションを通して、彼らの言葉を解読する任務を与えられる。彼女は過去形や現在形だけでなく未来形…もっと読む

数学する遺伝子―あなたが数を使いこなし、論理的に考えられるわけ

■言語能力が生んだ新たな力

 この世に「数学の遺伝子」なるものはないという言明から本書は始まる。ヒトは言語能力を獲得したときに数学をする能力も獲得した。数学の能力は、言語を生み出した心的能力の新たな用途にすぎないという。つまり書名にある「遺伝子」とは、誰もが生まれつき持っている「能力」のことを指す比喩(ひゆ…もっと読む

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

■「憧憬」と「忌避」のあいだで

 一般向けの数学書が、小さなブームだという。都内幾つかの大手書店で、平台陳列されているのを確認した。高等数学をかみ砕いて伝えるもの、中高の数学に再入門するもの、日常に密着した数学を詳述したもの、数学者評伝等、様々な系統がある。
 なぜ数学なのか。「数字は苦手!」と忌避する人が沢山(たくさん)いる中、数学にあらがいがたい憧憬(しょうけい)を抱く人も多いのかもしれない。ぼく自身そうだ。
■世界で最も確実
 数学的に証明されたことは、真理と言って良いという事実は格別に感じる。他……もっと読む

かけ算には順序があるのか (岩波科学ライブラリー)

■思想史的な問いかけ、なのだ

 今、小学校では、「6人に4個ずつミカンを配ると、ミカンは何個必要ですか」という問題に、6×4=という式を書くと、バツにされてしまうという。「教師用指導書」には、かけ算の式の順序を教えるように、と明記されているのだ。かけ算とは、「ひとつ分の数」×「いくつ分」によって「ぜんぶの数」…もっと読む

いかにして問題をとくか

■数学以外の問題解決に役に立つ

 この欄で取り上げる本を探すため、ネット書店のランキングを毎日のようにチェックしている。最近、えらく古い本が上位にあって気になった。テレビ番組で取り上げられたのがきっかけらしい。 G・ポリア著『いかにして問題をとくか』がその本である。奥付を見ると、初版は昭和29年。私が生まれる前…もっと読む

完全なる証明

■「空想世界」に生きて、知の孤独体現する姿

 数学のど真ん中を突く本ではない。それをめぐる知の孤独に迫る。 孤独を一身に体現するのは、難問中の難問である「ポアンカレ予想」の証明を成し遂げたロシアの数学者グリゴーリー・ペレルマン氏。2006年に数学界最高の栄誉であるフィールズ賞を辞退した。その数奇な半生をジャーナリストが描い…もっと読む

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