ふるさと追われた84歳が紡ぐ言葉 「原発難民の詩」

[文]週刊朝日編集部  [掲載]2012年07月27日

佐藤紫華子さん(左)と、佐藤さんの作品を朗読した吉永小百合さん=小貫和洋さん撮影 拡大画像を見る
佐藤紫華子さん(左)と、佐藤さんの作品を朗読した吉永小百合さん=小貫和洋さん撮影

地元で日本舞踊を教えていた佐藤さん(中央)は、いまも仮設住宅で教えている 拡大画像を見る
地元で日本舞踊を教えていた佐藤さん(中央)は、いまも仮設住宅で教えている

今年2月、佐藤さんは富岡町の自宅に一時帰宅した。放射能はもちろん、地震の被害も大きい 拡大画像を見る
今年2月、佐藤さんは富岡町の自宅に一時帰宅した。放射能はもちろん、地震の被害も大きい

一時帰宅したときの佐藤さん。後方に、東京電力の建物が見える 拡大画像を見る
一時帰宅したときの佐藤さん。後方に、東京電力の建物が見える

詩をかきためたノート。絵を描くことも 拡大画像を見る
詩をかきためたノート。絵を描くことも

表紙画像 著者:佐藤紫華子  出版社:朝日新聞出版

 「原発難民の詩(うた)」(朝日新聞出版、定価1050円)が好評発売中です。
 著者の佐藤紫華子(しげこ)さんは84歳。原発事故でふるさとの福島県富岡町を追われ、いまは同県いわき市の仮設住宅で暮らしています。
 事故の直後から佐藤さんは、思いを詩に託していました。そして昨年、『原発難民』『原発難民のそれから』という2冊の詩集を相次いで自費出版します。
 はじめの『原発難民』は数百部つくっただけでしたが、その反響は佐藤さんの想像をはるかに上回り、「このつらい気持ちは避難者みんなのものだ」「私たちが思っていることを書いてくれてありがとう」といった声が数多く寄せられました。
 今回の本は自費出版した2冊を再構成し、新たな作品を加えたものです。全56篇。
 作品の多くは、4畳半二間の仮設住宅で生まれました。ここで表現されているのは佐藤さん自身の思いであり、いまも不自由な生活を強いられている人たちの叫びです。

 たとえばそれは、原発への憤り。

〈仕事が ありますよ
 お金を 澤山あげますよ 甘い言葉にのせられて
 自分の墓穴を掘るために
 夢中になって働いてきて
 原発景気をつくった
 あの頃……〉

 あるいは、先の見えない不安。

〈はっきり云ってください もうだめと
 もう住めぬ と云って
 住宅資金を出して下さい
 そうすれば 半分は
 あきらめもしましょう〉

 そして、故郷への思い。

〈呼んでも 叫んでも
 届かない
 泣いても もがいても
 戻れない
 ふるさとは 遠く遠のいて〉

 佐藤さんにとって富岡町は、〈余りにも遠い 近いけど 遠いふるさと〉なのです。
 詩集は俳優・吉永小百合さんの目に止まり、今年4月に福島市で開かれた朗読会で、吉永さんは佐藤さんの作品を取り上げました。今回の刊行にあたっても吉永さんは、〈紫華子さんの心の叫びを、故郷への思いを、私は今、しっかりと受けとめたい。負けないで、乗り越えてと祈らずにはいられません〉とメッセージを寄せています。
 84歳の「原発難民」が紡いだ、素朴でストレートな感情表現の数々は、誰の心にも響いてきます。

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原発難民の詩

著者:佐藤紫華子/ 出版社:朝日新聞出版/ 発売時期: 2012年07月


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