池内了さんが選ぶ 宇宙本ベスト5

[文]池内了(総合研究大学院大学教授)  [掲載]2012年08月16日

表紙画像 著者:サイモン シン、Simon Singh、青木 薫  出版社:新潮社

(1)宇宙創成 [著]サイモン・シン [訳]青木薫
(2)膨張宇宙の発見 [著]マーシャ・バトゥーシャク [訳]長沢工、永山淳子
(3)重力とは何か [著]大栗博司
(4)アインシュタインの恋 上・下 [著]デニス・オーヴァーバイ [訳]中島健
(5)銀河の道 虹の架け橋 [著]大林太良

■ビッグバン説からたどる最新理論

 『宇宙創成』は、現代宇宙論の正統派理論であるビッグバンの考え方が歴史的にどのような経緯をたどってきたかを詳しく解説しつつ、ビッグバン説の急所を的確にまとめたものだ。現時点の宇宙論に関してもっとも実証的で公正な記述となっている。その理由は、確立した部分に依拠した科学史の本道を歩んでいるためである。
 そのビッグバン宇宙論が最大に依拠するのは宇宙膨張の観測で、その功はエドウィン・ハッブルに帰せられている。
 しかし、ハッブル以前に多数の研究者がスペクトルを撮り、銀河までの距離測定に苦闘してきた。その積み上げがあったからこそハッブルの発見につながったのだ。
『膨張宇宙の発見』は、それら忘れられた研究者の仕事を発掘したもので、まさに科学は積み上げであることが実感される。それにしても、膨張宇宙の発見者として著名なハッブル自身が宇宙膨張を信じていなかったのだから、歴史は皮肉なものである。
『重力とは何か』は、ニュートンが重力(万有引力)を発見して以来、重力は物理学を貫く根本的な力であるとともに、数々のアイデアの実験場ともなってきたことを説いている。アインシュタインの一般相対性理論は重力理論への偉大なチャレンジであったが、今や超弦理論や多次元宇宙などによって重力の作用が徹底的に探索されるようになっている。単純で簡明であればこそ、そこに潜む謎は奥深いのである。
 さて、重力は究極理論に対して、どのような橋渡しをするのであろうか。

  ◇

週刊朝日 2012年8月17-24日合併号掲載

この記事に関する関連書籍

宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)

著者:サイモン シン、Simon Singh、青木 薫/ 出版社:新潮社/ 発売時期: 2009年01月


宇宙創成〈下〉 (新潮文庫)

著者:サイモン シン、Simon Singh、青木 薫/ 出版社:新潮社/ 発売時期: 2009年01月


膨張宇宙の発見: ハッブルの影に消えた天文学者たち

著者:マーシャ バトゥーシャク、長沢 工、永山 淳子/ 出版社:地人書館/ 発売時期: 2011年07月



アインシュタインの恋〈上〉

著者:デニス オーヴァーバイ、Dennis Overbye、中島 健/ 出版社:青土社/ 発売時期: 2003年04月


アインシュタインの恋〈下〉

著者:デニス オーヴァーバイ、Dennis Overbye、中島 健/ 出版社:青土社/ 発売時期: 2003年04月



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