向井萬起男さんが選ぶ 宇宙本ベスト5

[文]向井萬起男(慶応大学医学部准教授)  [掲載]2012年08月16日

表紙画像 著者:立花 隆  出版社:中央公論新社

(1)宇宙からの帰還 [著]立花隆
(2)ファーストマン 上・下 [著]ジェイムズ・R・ハンセン [訳]日暮雅通、水谷淳
(3)わたしを宇宙に連れてって 無重力生活への挑戦 [著]メアリー・ローチ [訳]池田真紀子
(4)ザ・ライト・スタッフ 七人の宇宙飛行士 [著]トム・ウルフ [訳]中野圭二、加藤弘和
(5)スペース 上・下 [著]ジェームズ・ミッチェナー [訳]水上峰雄

■宇宙観を一変させた飛行士の物語

 一冊の本が世の中を変えることがある。『宇宙からの帰還』は、そうした稀有な本だと思う。日本社会の仕組みや日本人の価値観を変えたりしたわけではないが、それまで宇宙飛行に大して興味を持っていなかった大勢の日本人に興味を抱かせることになった功績には計り知れないものがある。約30年前にこの本が世に出たとき、私は貪るように読んだし、その後も何度も読み返している。アメリカ人宇宙飛行士が宇宙飛行体験と宗教的体験を結び付けて語る箇所だけに注目する読者が多いのはチョット残念。この本にはそうしたことだけではなく、宇宙飛行のさまざまな側面についての詳細な記述もあることを忘れないで欲しい。
『ファーストマン』は、人類として初めて月面に立ったニール・アームストロングの公認伝記本だ。私は公認伝記本が好きではないのだが(何となくいかがわしい感じがするから)、この本だけは許してしまう。宇宙飛行士が月面に降り立つまでの過程すべて(訓練の様子、メカニックなこと、心理的なことなど)がこれほど詳細に書かれた本は他にはない。また、アメリカ社会とアメリカ人を理解する上で実に参考になることも満載だ。
『わたしを宇宙に連れてって』はアメリカの女性ジャーナリストが書いた本だが、序章に続く本文は日本の宇宙飛行士選考の様子から始まる。これだけでも驚くが、ユーモア精神とチャレンジ精神に溢れた著者が現代の宇宙飛行士たちに本音をドンドン吐かせ、自ら無重力状態を体験してレポートしているのにはもっと驚く。アメリカ人にしか書けない宇宙関連の名著だ。

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週刊朝日 2012年8月17-24日合併号掲載

この記事に関する関連書籍


ファーストマン(上) (ニール・アームストロングの人生)

著者:ジェイムズ・R. ハンセン、James R. Hansen、日暮 雅通、水谷 淳/ 出版社:ソフトバンククリエイティブ/ 発売時期: 2007年05月


ファーストマン(下) (ニール・アームストロングの人生)

著者:ジェイムズ・R. ハンセン、James R. Hansen、日暮 雅通、水谷 淳/ 出版社:ソフトバンククリエイティブ/ 発売時期: 2007年05月



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