三島由紀夫 偏愛ライブラリー その3

三島由紀夫(1925-1970)と同世代で親交が深く、「その作品を処女作から絶筆にいたるまで、すべて発表の時点で読んでいる」という作家・渋澤龍彦が書評などで取り上げた三島作品から、一部を紹介します。

午後の曳航 (新潮文庫)

午後の曳航 (新潮文庫) 著者:三島 由紀夫 出版社:新潮社

父にも子にも、作者の孤独が反映

母とその恋人である船乗りとの情事をのぞき見た少年は、やがて「父」となる存在への「報復」を誓う。1968年の発表当時、批評家らは辛口だったが、渋澤は「夢想というものの重いイローニッシュな響きにみちみちた小説」と絶賛。「殺される父にも、殺す少年にも、ひとしく作者の孤独が反映している」と見通した。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫) 著者:三島 由紀夫 出版社:新潮社

美しくそびえ立つ寺に火を放ったのは……

修行僧による金閣寺の放火という実際の事件を題材に、放火に至るまでの青年の心理を描く。そびえ立つ金閣寺の威厳と美しさに貫かれた傑作。渋澤は「戦後、古典主義を標榜して出発した」三島が「自己の思想的完成」をとげた作品として位置づけている。映画化や舞台化されたが市川崑監督「炎上」の市川雷蔵がすばらしい。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

禁色 (新潮文庫)

禁色 (新潮文庫) 著者:三島 由紀夫 出版社:新潮社

ヨーロッパデカダンス文学の芳香

主人公南悠一は美青年の同性愛者。フランス語に堪能な作家檜俊輔は悠一を使って、かつて関わった女性への復讐を試みる。檜はユイスマンスの翻訳などをやっており、サドの名前も登場。渋澤によると、三島にとって「ヨーロッパの世紀末デカダンス文学が、いかに身近で切実な関心の対象であったか」が分かる作品。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

音楽 (新潮文庫 (み-3-17))

音楽 (新潮文庫 (み-3-17)) 著者:三島 由紀夫 出版社:新潮社

好みの「権高なタイプの女性」を通して描いた精神の不条理

自我が強くて虚言癖のある美貌の女性弓川麗子の心を解き明かしていく「精神分析小説」。「在来の精神分析の理論のみによってはなかなか割り切ることのできない、人間の精神の不条理さを描きだそうとこころみた小説」と渋澤。麗子のような「凜とした、権高なタイプの女性」を三島は好んで書いた。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫) 著者:三島 由紀夫 出版社:新潮社

「多年にわたるサド的世界との交渉の結実」

三島が手がけた戯曲の中の一つ。長年、サドの翻訳を手がけてきた渋澤の「サド侯爵の生涯」に触発されて生まれた作品。渋澤によると、男女入り乱れた複雑な拷問シーンの訳について、三島から直接質問されたこともあるらしい。「多年にわたるサド的世界との交渉の結実であり、みごとな成果である」と讃えている。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

美徳のよろめき (新潮文庫)

美徳のよろめき (新潮文庫) 著者:三島 由紀夫 出版社:新潮社

貞淑な妻に十字架を背負わせた、1960年の話題作

サドの「美徳の不幸」から直接ヒントを得たという。上流家庭の奥様で、無垢な魂を持つ節子に、不義不定の十字架を背負わせた話題作。「よろめき」は流行語にもなった。古典的心理小説が手本のようだが、渋澤は「ヒロインの肖像を描くことからはじまって、最後にシニカルな道徳論の落ちが付いている」点がサド的と指摘。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)

春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫) 著者:三島 由紀夫 出版社:新潮社

悲劇的恋愛小説で大河ドラマの幕開け

輪廻転生を描いた大河小説「豊饒の海」四部作の第一弾。侯爵家の息子松枝清顕と、その幼なじみで伯爵家の娘聡子の悲劇的な恋愛を描き「優雅を追求」(渋澤)した作品。清顕の生まれ変わりが第二部以降の主人公となっていくのだが、清顕の親友本多繁邦が観察者として主人公たちを見守り、物語をつないでいく。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

奔馬―豊饒の海・第二巻 (新潮文庫)

奔馬―豊饒の海・第二巻 (新潮文庫) 著者:三島 由紀夫 出版社:新潮社

政治の力学をエロティシズムの面から追究

「豊饒の海」第二部。剣道の神童で愛国者の飯沼勲が清顕の生まれ変わりとして登場。渋澤は「支配と非支配の関係、つまり政治の力学を、エロティシズムの面から追求しようとしたもの」と評し、第一部と第二部を「エロティシズムを軸として、明らかな陰画と陽画の関係」という。勲は獄中で女になる夢を見、第三部につながる。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

暁の寺―豊饒の海・第三巻 (新潮文庫)

暁の寺―豊饒の海・第三巻 (新潮文庫) 著者:三島 由紀夫 出版社:新潮社

仏教国タイを舞台に輪廻転生の新たな展開

第三部。清顕の親友本多は、タイで勲の「生まれ変わり」の月光姫と出会う。渋澤は「美しい青年の純粋な行動を綴った」第一部と第二部の後、女性の存在意味の解明がされることが「物語の論理的必然」という。ただ、三島の「内面の虚無との凄絶な格闘」により物語はドラマ性を失っていく。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

天人五衰―豊饒の海・第四巻 (新潮文庫)

天人五衰―豊饒の海・第四巻 (新潮文庫) 著者:三島 由紀夫 出版社:新潮社

三島の虚無が「さらけだされてしまった」終末

最終部の主人公は働く少年安永透。80代になった本多が京都や奈良を歩くシーンは三島自身の取材旅行そのまま。渋澤が三島の虚無が「さらけだされてしまった」という終末だが、全部を通しては「三島氏の関心をそそられた、あらゆる哲学、あらゆる観念、そしてそれに伴うあらゆる象徴的イメージが投入された(中略)豊かな、稠密な、しかも悠々たる流れの物語」と絶賛している。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

ページトップへ戻る