探偵はどこにいる

タフな探偵が事件を解決するハードボイルド小説。ハメットやチャンドラーが作り上げた男のやせ我慢の美学は、この半世紀の間に大きく変わった。懐かしい名作から男らしさが信じられなくなった受難の時代のハードボイルド分析まで、今宵、グラスを傾けながら…。

探偵はバーにいる (ハヤカワ文庫JA)

探偵はバーにいる (ハヤカワ文庫JA) 著者:東 直己 出版社:早川書房

どこか懐かしいハードボイルド

 「ここに電話をくれれば、話は必ず俺に届く」――。ススキノのバーを拠点にする探偵<俺>。依頼があればグラスに注がれた酒を体に流し込み、ネオンの街へと消えていく。歓楽街ススキノの裏社会を縦横無尽に駆け巡り、軽妙なやり取りが魅力になったユーモラスでどこか懐かしいハードボイルド。ススキノで暮らした作家・東直己のご当地小説でもある。第2作「バーにかかってきた電話」は北海道が生んだ人気俳優・大泉洋の主演で映画化され、人気を集めている。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

マルタの鷹 (創元推理文庫 130-2)

マルタの鷹 (創元推理文庫 130-2) 著者:ハメット、村上 啓夫 出版社:東京創元社

タフな探偵の原型

 『血の収穫』などで知られるダシール・ハメットが1930年に発表し、以後のハードボイルド小説の原型になった。文体は簡潔で心理描写を徹底して省き、タフな私立探偵が自らの信念を貫きながら事件の核心に迫る。物語は若い女から家出人捜しの依頼を受けたことで殺人事件に巻き込まれた私立探偵サム・スペイドが主人公で、マルタ島騎士団がスペイン皇帝に献上したとされる鷹の彫像「マルタの鷹」争奪戦がからむ事件の謎を明かしていく。ハンフリー・ボガード主演で映画化され、そのタフでニヒルな探偵像は今も人気が高い。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

ロング・グッドバイ

ロング・グッドバイ 著者:レイモンド・チャンドラー、村上 春樹 出版社:早川書房

村上春樹新訳で再注目

 07年の村上春樹新訳で再注目されたレイモンド・チャンドラーの代表作の一つ。村上春樹は「チャンドラーのオリジナルな特質がもっとも優れた、美しいかたちで、なおかつ先鋭的に現れているのが、この『ロング・グッドバイ』という作品ではないかと僕は考えている」とあとがきで記す。「さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ」などの名セリフを清水俊二訳『長いお別れ』と村上春樹訳を読み比べるのも楽しい。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)

私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA) 著者:原 りょう 出版社:早川書房

チャンドラーを日本で再結晶化

 チャンドラーのハードボイルド精神を引き継ぎ、日本で再結晶化したのが原尞(りょう)だった。乾いた文体、粋なセリフ、タフな探偵の活躍など、和製チャンドラーと呼ばれるほどチャンドラーのエッセンスをとらえている。『私が殺した少女』は『そして夜は甦る』に続く私立探偵・沢崎シリーズの2作目で、1989年に直木賞を受賞した。探偵・沢崎が少女誘拐・殺人事件に巻き込まれ、真相に迫っていく。ハードボイルド小説入門に適した一冊。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

ヒーローたちの荒野

ヒーローたちの荒野 著者:池上 冬樹 出版社:本の雑誌社

ハードボイルド小説の現状を一覧

 チャンドラーなどの古典からエルロイ、馳星周などのノワール(暗黒)系小説まで、多くの作品と向き合ってきた文芸評論家・池上冬樹のハードボイルド論がさえる。なにが善でなにが悪かがわかりにくい時代に、「卑しき街をひとりいく孤高の騎士」というチャンドラーが規定したヒーロー像は共感しにくくなっている。自分の信念や規範を守り通し、混乱した秩序を回復させる物語が「オヤジのハーレクインロマンス」とからかわれる時代に、どんなハードボイルド小説が可能なのか。作品論を通して、荒れ野に置かれたヒーローたち(ヒーローを創作する作家たち)の悩みを見すえている。

  • ブックアサヒコム書店
  • アマゾン
  • 楽天
  • 紀伊国屋
  • TSUTAYA

ページトップへ戻る