ブック・アサヒ・コム 今年のベスト10

 2011年の「ブック・アサヒ・コム」ベスト10を発表します。ブックマ(お気に入り登録)数などにもとづくランキングで、10作品それぞれに寄せられた読者レビューも紹介します。
 今年の第1位は池井戸潤さんの直木賞受賞作『下町ロケット』でした。
 池井戸さんは「エンターテインメント小説は、わあ面白かったと思って読んでくれたらいいと考えて書いているのですが、それ以上に、この小説を自分の仕事に照らし合わせて読んでくれたり、元気づけられたと言ったりしてもらえるのは書き手として望外の喜びです。レビューも拝見し、励みになりました」と話しています。

 【ベスト10の書名、著者、出版社】

 1位 下町ロケット 池井戸潤 小学館
 2位 世界の夢の本屋さん エクスナレッジ エクスナレッジ
 3位 東京ロンダリング 原田ひ香 集英社
 4位 スティーブ・ジョブズⅠ、Ⅱ ウォルター・アイザックソン 井口耕二・訳 講談社
 5位 紅梅 津村節子 文芸春秋
 6位 リトル・ピープルの時代 宇野常寛 幻冬舎
 7位 米国製エリートは本当にすごいのか? 佐々木紀彦 東洋経済新報社
 8位 福島原発の闇 原発下請け労働者の現実 堀江邦彦・文 水木しげる・絵 朝日新聞出版
 9位 困ってるひと 大野更紗 ポプラ社
 10位 ジェノサイド 高野和明 角川書店
    ◇
 2011年8月から12月上旬にかけての「ブック・アサヒ・コム」のブックマ数や売り上げ点数、レビュー数などをもとに集計。
  

下町ロケット

下町ロケット 著者:池井戸 潤 出版社:小学館

山椒は小粒でぴりりと辛い・・・そんなGood jobの物語

トラトラ1964さんのレビューより

 日本の株式会社の8割は中小あるいは零細企業。なのに、注目されるのは有名で資本力の大きな巨大企業ばかりで、往々にしてそういう大企業の論理が幅をきかせる世知辛い世の中なんですよね、昔も、今も。
 大は大であることを笠に着て威張り、小は悔しいながらも抵抗むなしく結局追随せざるを得ない。そんな事も多い。
 会社勤めをしたり、個人で事業を経営したりした経験のある人なら誰しも、一度や二度は「世の中、どこかおかしくないか。。。。こんな、理不尽がまかり通る社会じゃ、ホント、生きづらいよなぁ。。。」と感じた事があるんじゃないかな。
 大きい者、強い者は、常に、自らより規模が小さかったり、盤石な基盤を持っていない相手を見下し、蔑む傾向にあったりする。悔しいんだけれどね。でも、そんな大の論理を押しつける相手に、小が負けない技術力で挑む。だって、夢があるんだもん!
 「仕事は二階建ての家だ」
 食うために働く。でもそれだけじゃつまらない。夢がなくっちゃ。でも、夢を追いかけるだけでは飯は食えない。だから、食うための仕事も疎かにはできない。。。。そう、その通り!こんな事のいえる社長は、そうそういるもんじゃない。
 読後感、爽快です。こんな、会社が現実にあったなら、私もそこで働きたいなぁ、ほんとに!

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世界の夢の本屋さん

世界の夢の本屋さん 著者:清水玲奈、大原ケイ、エクスナレッジ 出版社:エクスナレッジ

本屋が好き!

BookStoneRさんのレビューより

図書館の予約の順番がようやく回ってきて、受け取りに行ったら、でっかい豪華本だったので、ビックリしてしまいました。
世界の素敵な独立系本屋さんを写真で紹介する、美しいアートの世界です。
いくら、電子書籍だ、ネット書店だと時代が移り変わっても、ちゃんと勉強して自己主張して、お客さんに知的な驚きと居心地の良い空間を与えている本屋さんは、生き残っていくのだという希望が見えました。
図書館使った私が言うのも何ですが・・・でも、ちゃんとリアル本屋でも購入していますよ。

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東京ロンダリング

東京ロンダリング 著者:原田 ひ香 出版社:集英社

都会の闇と平坦な日常

文太郎さんのレビューより

「死んだ人の部屋に住むのが彼女の仕事。」

オビにこんなコピーが書かれている。穂村さんの新聞書評もたいへん印象深くて手にとった。

死人が出た部屋を紹介する際、不動産屋は次の入居予定者にその事実を伝えなければならない。ただ、1ヶ月でも誰か別の人が住めば、告知の義務がなくなる。

その1ヶ月を過ごして部屋を「浄化」するのが、ロンダリングの仕事。

都会の隙間、都会の闇、という言葉がぴったりはまる。

本書を読む前は、死人の影におびえながら、夜な夜な孤独と戦う女性の姿がおどろおどろしく描かれているのではないかと・・・・・・勝手に想像していた。

ところが、読んでみるとだいぶ印象が違う。

不動産屋に指示されるまま、部屋での生活を実直にこなす女性がいる。

ロンダリング仲間と心を通わせ、大家との距離をはかり、きょうはどの定食屋でごはんを食べようかと計画を練る、そんな女性が主人公だった。

たんたんとしている・・・・・・。

でも、そこがリアルなのかもしれない。

過酷そうな仕事をしている人を「たいへんだ」と思うのは他者からの目線で、じつは当人は冷静沈着で「いや、べつに、なんとかなってる」ということはよくある。

若干肩すかしを食うような印象もあるけれど、極端にふれず、「常温」を維持しているところがこの物語のよさのように思えた。

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スティーブ・ジョブズ I

スティーブ・ジョブズ I 著者:ウォルター・アイザックソン、井口 耕二 出版社:講談社

多くを学ばせてくれた人だった

夏来さんのレビューより

 言わずと知れたスティーブ・ジョブズの伝記本。現代の人だが、最近若くして亡くなってしまったことで、その一生を語った本となってしまった。一緒に働くのは難しい人なんだろ言うということはあらかじめ知っていたが、この本を読んで改めてその思いを強くした。しかし私自身を含めてiPhoneやiPodを使っている人には、それらの機器に対する思い入れをさらに強くする本でもある。多くを学ばせて考えさせてくれる人なんだったと思わせてくれる本だった。

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紅梅

紅梅 著者:津村 節子 出版社:文藝春秋

自分で苦労されたからこそ立派な生き方をされる

chachaのお散歩相手さんのレビューより

28年前に他界した父の中学時代の一年後輩が小説家吉村昭さんだ。
ある結婚式で同席した父が、次の作品の話を聞いてきてとても感動していたことを思いです。
人生80まで生きられれば素晴らしいと思う。晩年の去り方は人それぞれだろうが、それまでの人生の積み上げ方がとても重要だ。

吉村さんの若かりし頃からの生き様を小説家の奥様が暖かい視点で描かれている。津村さんとしても傑作を書かれたと思う。

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リトル・ピープルの時代

リトル・ピープルの時代 著者:宇野 常寛 出版社:幻冬舎

ビッグ・ブラザーからリトル・ピープルへ

アヴォカドさんのレビューより


村上春樹と、ヒーローのことと、東日本大震災のこと。
これが、本書の大きな3本柱である。

村上春樹の現代文学におけるその大きさについて否定するつもりは全くないのだけれど、どこかにひっかかりを覚えてきたので、そのひっかかりとは何なのか、を、考えながら読むことになった。

村上春樹についての考察の中で、「現代的なコミットメントのコストを母=娘的な女性に転嫁するという性暴力的な構造」つまり「ある種のレイプ・ファンタジィ性」に支えられている、という箇所で、ハタと、そうかそれかな、と思い至った。

きちんと分析できはしないのだけれど、抱き続けてきた違和感は、「なんか男の主人公が得してる小説だな」という感じだったかもしれない。
だから、なんで(その割に)こんなに女性ファンがいるのかな、ということも不思議だったのかも。
(これは明確な答えではないので、これからも村上春樹の作品を読みながら、ひっかかって考えていくしかないんだけれど)

そしてこれは結局のところ、「父」「父なるもの」論である(だよね?)。

しかし関係ないけど、最早「サブカルチャー」というのは死語かもしれないなあ。サブじゃないもん、リッパに「センター」張ってるもんなあ。

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米国製エリートは本当にすごいのか?

米国製エリートは本当にすごいのか? 著者:佐々木 紀彦 出版社:東洋経済新報社

縦横無尽なアメリカ論

ひなおさんのレビューより

アメリカは日本の鏡、アメリカを論じることを通して、著者の「日本をどげんとせんといかん」という気迫が伝わってきます。

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福島原発の闇 原発下請け労働者の現実

福島原発の闇 原発下請け労働者の現実 著者:堀江 邦夫、水木 しげる 出版社:朝日新聞出版

絵が怖い……

ジャスフォーからの読書さんのレビューより

これ日本で起きていることでしょ?こんなに具体的なことが書いてあるのに、40年間放置プレイだもんなぁ。法治国家じゃなくて放置国家だね!なんちゃって!
冗談はさておき、結局、人間生きていくためには金が必要ってことでしょ。極端な例なのかな。こんなところで働くのやめようよ!って言いたくなる。浅い考えかもしれないけど。
やっぱ原発で潤ってきた人もたくさんいるってことかぁ。
電気は必要だけど原発は必要ないっていう判断もありだと思うのだけどやっぱお金は欲しいよな。
原発補助金(っていうのかな?)が出るのは危険だからなのに…絶対安全なら補助金要らないよね。こんなのみんなわかってるくせに、事故が起きたら、安全って言ったじゃないかぁ!って怒ってる。こわいね。
ちなみにこの本は体験談をまとめたものであって、どうすればよいという指針が見えませんよね?

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困ってるひと

困ってるひと 著者:大野 更紗 出版社:ポプラ社

闘病記ではない、闘生記

どら猫さとすけさんのレビューより

どんなに重い病気でも、生きる希望をあきらめない。それがどれほどの強靭な力が必要か。くじけそうになって、ドロップアウト寸前まで行ったら。しかも社会的支援も、救ってくれるかと思いきや、そうでもない。
それでも、彼女は持ち前の明るさと負けじ魂で、苦難を乗りきったのだ。生きることとは、何のために生きるか。考えている人たちには、本書は希望を見出だす鍵となるだろう。

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ジェノサイド

ジェノサイド 著者:高野 和明 出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)

ヒトの本質とは何なのか?

蒐さんのレビューより


今年読んだ本の中で、一番読んでて興奮した本です。
最初から最後までドキドキしっぱなし!
スケールのでかいストーリーと、ぐいぐいと読ませる迫力のある展開に加えて、話の内容も考えさせられるものなので、とても読み応えがありました。

アフリカのコンゴで極秘任務にあたることになった元アメリカ軍特殊部隊の傭兵と、父親を亡くしたばかりの日本の理系大学院生・・・何の接点もない2人の人生が、複雑に絡み合い物語が進んでいきます。
傭兵のイエーガーは、ハリウッド映画で主役を張れそうな雰囲気のハードボイルドな男。
一方、もう一人の主人公である日本人大学院生の研人は、「草食系」とか言われちゃいそうなタイプの口ベタで温厚な青年。
この人種も性格も育ちも境遇も、まったく異なる2人の主人公は魅力的です。イエーガーはかっこいいし、研人には親しみが持てます。

2人の前に立ちはだかるのは、アメリカ政府の陰謀と人類絶滅の危機。とにかく物語のスケールがでかい!
どことなくブッシュ政権を想起させるような時代設定なのですが、とにかくホワイトハウスの腐敗っぷりが凄まじく、持てる軍事力や科学力を総動員して暗殺を謀ろうとする様子が怖いです。

この作品を読んで考えたのは、「ヒトの本質とは何か?」ということです。
この作品には、ヒトの残虐さがありありと描かれています。文中に「同種間のジェノサイド(大量殺戮)を行なう唯一の動物」という表現がありますが、この表現がすごくしっくりきます。
しかし同時に描かれている、人の命を救うために奔走する主人公たちの姿は、人間の善良さを象徴しているようで希望が持てます。
結局人間は、残虐な側面も善良な側面も持つがゆえに、生物種として不安定で不完全なのかもしれません。
自分もいざというときには、この物語の登場人物である研人たちのように善良な方向へ動ける人間でありたいです。

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